待兼山俳句会
第632回 令和2年3月16日
兼題 虎杖・春の水(幹三)
啓蟄・蒲公英(暁子)
選者吟
虎杖の谷のしづかな日暮かな 幹三
啓蟄のマトリョーシカの次々と
春の水うごきて鯉の向き変る
啓蟄や思はぬ人と出会ひたり 暁子
子らの髪刈るたんぽぽの絮の飛ぶ
落ちさうで落ちない亀や春の水
選者選
幹三選
啓蟄のハトの首振りしきりなり 昴
啓蟄や思はぬ人と出会ひたり 暁子
咲き初めのたんぽぽの黄に濁りなし 眞知子
たんぽぽの絮吹く口の笛となる 朱美
たんぽぽやかごめかごめと日暮まで 眞知子
春の水セーヌに溢れ河岸沈む 昴
啓蟄の日差しを受くる椅子にをり 橙
畦内の蒲公英ひとつ鋤かで措く 邦夫
蒲公英の黄のいよよ濃し雨去りて 安廣
◎蒲公英の絮とぶ空へ観覧車 正信
暮れなづみ一筋光る春の水 昴
幾たびも帽子飛ばさる春一番 遊子
◎落ちさうで落ちない亀や春の水 暁子
すんすんと蕨吹き出す阿蘇路かな 盛雄
◎水掻きの動きもゆるむ春の水 朱美
虎杖の伸び放題や地蔵堂 輝子
堰切れば実りの予感春の水 和江
啓蟄やさう言へば吾子声がはり 輝子
道草や虎杖かじりかじりして かな子
◎哲学に倦み虎杖の手に余る 和江
倒木に絡み渦巻く春の水 正信
たんぽぽの花あしらひし刺身かな 洛艸
虎杖の茎折る音の追ひつきぬ 兵十郎
虎杖の音に酸っぱさ滲み出し 昴
見つけたる虎杖に手の届かざる 言成
虎杖を摘んでいるらし声のする 輝子
◎啓蟄や三日で飽きる家籠り 翠
足跡のある道歩く春の水 橙
◎啓蟄の眼の点々と暮の原 正信
暁子選
大阿蘇の噴煙地虫穴を出づ 正信
虎杖を齧り山野を駆けし日よ 翠
虎杖を食みて藤原京広し 兵十郎
春の水鷺の凝視のひとところ 輝子
たんぽぽの絮吹く口の笛となる 朱美
タンポポと休みにはしやぐ子等の声 朱美
啓蟄や草間にものの気配あり 安廣
春の水淀のわんどを埋め尽くし 兵十郎
禁足の身ぬちもぞもぞ地虫出づ 太美子
啓蟄の堆肥の山の鋤かれいく 洛艸
◎啓蟄の土脱ぐ虫よコロナ禍ぞ 眞知子
◎手を洗ふ春水思いっきり出して 翠
虎杖を噛みつつ能登の棚田ゆく 盛雄
雪解水白くたばしる佐久の里 かな子
◎コロナ禍や人もまばらな入彼岸 洋一
啓蟄の朝背を伸ばし闊歩する 朱美
信楽焼の窯出し春の水高し 盛雄
◎春の水野鳥群れ来て人もまた 翠
虎杖を煙草に代へし戦後ありき 瑛三
春の水小石を縫うて煌めけり 邦夫
すんすんと蕨吹き出す阿蘇路かな 盛雄
どつと吐き猛る春水ダム放流 洛艸
◎城壁のジグソーパズル水温む 遊子
手術日を告げられ窓は春嵐 りょう
閘門の開くや音なす春の水 正信
堰切れば実りの予感春の水 和江
受験して結果待つ子の所在なさ 茉衣
返事せず蒲公英の絮吹くばかり 幹三
啓蟄や三日で飽きる家籠り 翠
佇みて魚影追ふ人春の水 太美子