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第594回 平成29年8月 

     台風のため後選のみ

 

選者吟

かの戦火父母にありしよ魂祭   浩一郎

棚経の僧の来る日も定まりぬ

線香花火小さき趣ありにけり

 

新豆腐どつしりとあり笊の上   幹三

線香花火ふくれきつたる火玉かな

八月の鍋いつぱいのカレーかな

 

選者選

浩一郎 選

下山して山の清水の新豆腐    翠

新豆腐どつしりとあり笊の上   幹三

八月の賀茂川渡る手を取りて   兵十郎

残り香もさびし線香花火かな   かな子

◎手花火の一部始終に息詰めて  京子

手花火になり人の輪の縮まりぬ  兵十郎

◎線香花火玉じりじりと膨らみぬ 橙

線香花火ふくれきつたる火玉かな 幹三

八月や声明流る比叡山      京子

時差呆けを吹つ飛ばしたり新豆腐 浩風

◎手花火の火の玉ぽとり落ちし闇 瑛三

八月の鍋いつぱいのカレーかな  幹三

小さき子の花火線香みな囲む   言成

◎手花火の消えてさびしさ残りけり 嵐耕

故郷の小さき墓地や魂祭     安廣

ギヤマンにちよつとよそゆき新豆腐

                太美子

しやつしやつしや線香花火今松葉 言成

◎闇もどり手花火匂ふ静寂かな  邦夫

鉄橋の列車徐行す大花火     京子

新涼に散歩の道を変へてみる   太美子

スズメバチ蝉を食みおり日は真昼 かな子

川風に揺られさざめく鳳仙花   茉衣

◎新豆腐歯に沁み透る嵐山    元彦

手花火を共に持つ孫手の小さき  安廣

 

幹三 選

従姉妹らの線香花火の賑々し   元彦

◎寺継ぐと決めし少女の盆の経  暁子

八月やあらし来るらし山の音   昴

八月や産み月近き娘の大儀    輝子

八月の賀茂川渡る手を取りて   兵十郎

◎八月や少し厚めの山支     安廣

手花火は顔寄せ合ひて濡縁に   乱

走る雲眺めて飽きぬ窓の秋    元彦

手花火の一部始終に息詰めて   京子

新豆腐とんとんとんと手俎    浩風

ヴァカンスのパリの屋根裏大西日 陽子

膝を抱き残りの線香花火焚く   輝子

線香花火玉じりじりと膨らみぬ  橙

新豆腐四角に切られ沈みけり   昴

手花火や独りに闇の深きこと   太美子

◎老いらにも持たす線香花火かな 洛艸

湧き水の溢れる町や新豆腐    昴

闇となり子らに線香花火あり   浩一郎

八月のもう薄暗き夕餉どき    橙

念押して出されし肴新豆腐    洛艸

◎鉄橋の列車徐行す大花火    京子

◎手花火や家系に多き左利き   暁子

八月やあの世この世の際あやし  乱

◎新涼に散歩の道を変へてみる  太美子

言はずともそれと分かりし新豆腐 洛艸

◎醬油にもこだはりありて新豆腐 暁子

真夜中にじりりと鳴ける油蝉   橙

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