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第602回 平成30年3月19日

 

選者吟

生ひ初めし水草の水に添ひ歩む  浩一郎

桃の日や遠く住む娘にする電話

老いもまたはなやぐ桃の節句かな

耕され土の吐き出す黒き息    幹三

もの言はぬ父でありしよ蜆汁

ウクレレをぽろんと少女雛あられ

 

選者選

浩一郎 選

耕の人段々の棚田かな      瑛三

◎蜆掻く夫に蜆を選る女房    洛艸

わが明日も明るくなりし水草生ふ 輝子

◎初花を雨意もつ風のふるはせて 太美子

花ミモザ春彩りてポルトガル   茉衣

老の身を伸ばしまた折り耕すや  乱

梅愛づる手話の動きのはづみたり 遊子

比良颪揺るる孤舟や蜆採     瑛三

春来るも我をのこして友は逝き  磨央

◎もの言はぬ父でありしよ蜆汁  幹三

水底の闇の色なる蜆かな     幹三

桃の花添へて供花の華やげり   洋一

雛飾古き庄屋の帳場跡      兵十郎

◎よき事の今日もあるべし蜆汁  輝子

老人の語らふベンチ水草生ふ   邦夫

木蓮の蕾は天に屹立す      かな子

こつこつと耕す山田老独り    洛艸

マンションの小さき雛壇小さき幸 安廣

舳は妻にひねもす艫の蜆漁    和江

◎鋤を引く耕馬逞し土匂ふ    安廣

すこやかに桃の節句を迎へけり  嵐耕

桃活けて節句の膳にロゼワイン  瑛三

草朧ろ御陵の森に雲低く     陽子

◎人去りて蜆黙解く夜の厨    暁子

雛飾る母の背中に日の優し    安廣

一握り買ひて一椀蜆汁      翠

◎平凡な家系なりけり蜆汁    暁子

花馬酔木崩れ土塀の小径かな   輝子   

 

幹三 選

◎わが明日も明るくなりし水草生ふ 輝子

石山を登り降りして蜆めし    言成

丁子の香ほのかにまとふひなの軸 かな子

◎消しゴムを使へばゆるる花馬酔木

                太美子

◎白酒じや酔ひはせんぞと右大臣 眞知子

◎生ひ初めし水草の水に添ひ歩む 浩一郎

母と子と板間にぺたり雛納    邦夫

ベレー帽似合ふ日和の梅見かな  遊子

雑貨よろずご利益よろず彼岸市  遊子

余生なほ延ばさんとして蜆汁   言成

◎デモ出発開花宣言地点より   陽子

◎町中が桃の節句になる慣ひ   兵十郎

湧水に揺れに揺れ生ふ水草かな  洛艸

◎裏返しまた裏返し耕せる    輝子

家中に酢の匂ひして雛の日    暁子

雛飾る母の背中に日の優し    安廣

水草生ふ湾処に魚影戻り来し   瑛三

雛の間の子は聞かなくていい話  眞知子

水草生ふ水面に柔らかな日差し  京子

土を見てひたすら土見て春耕す  昴

舟底に瀬田の蜆の黒光る     兵十郎

◎笊にとり洗ふ蜆の黒ぐろと   安廣

蜆汁父はシベリアより帰還    かな子

青垣の山に谺す春の雷      洋一

唐橋の下を往き来の蜆舟     洛艸

◎耕や砕けし土の日を浴びて   邦夫 

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