待兼山俳句会
第618回 奈良吟行
平成31年3月31日 (日)
選者吟
一の鳥居二の鳥居にも春の鹿 幹三
手の平を礎石に置きて暖かし
唇の濡れおやこれは春時雨
新元号発表は明日初桜 暁子
哀史秘めきぬかけ柳芽吹きをり
春灯阿修羅の腕の影幾つ
選者選
幹三選
予報では奈良は三分と花だより 眞知子
山焼済み若草山は黒々と 言成
蓬餅食ひつつ池をひとめぐり 輝子
◎春空に酔ふ程塔を見上げをり 兵十郞
七分咲き三分咲きあり桜坂 瑛三
◎さはさはと揺れても静か花馬酔木 眞知子
花楓参道を行く乳母車 輝子
芽柳の風にたなびく池の端 洋一
南円堂浮くや垣根の花馬酔木 兵十郞
春愁の阿修羅はいまだ童子なる 瑛三
糸桜赤き蕾を塔に寄せ 兵十郞
◎生駒山越えきて奈良の余寒かな 暁子
堂裏は低き垣なり花あしび 輝子
対岸の塔を透かせる柳かな 邦夫
◎囀や伽藍の屋根の険しかり 邦夫
飾り釘打つ音長閑中金堂 兵十郞
◎春の雲五重塔をよけて浮く 眞知子
新元号発表は明日初桜 暁子
藤の芽の皆ふくふくと南円堂 輝子
剥落の菩薩長閑に釈迦守る 言成
暁子選
◎はつきりと我を見ている春の鹿 幹三
春の堂十大弟子の愁ひ顔 瑛三
唇の濡れおやこれは春時雨 幹三
馬酔木咲く古都の息吹のごと白く 眞知子
◎春愁の眉間の皺か阿修羅像 邦夫
◎なつかしの古書店健在春日差 洋一
さはさはと揺れても静か花馬酔木 眞知子
春愁の阿修羅はいまだ童子なる 瑛三
糸桜赤き蕾を堂に寄せ 兵十郞
◎堂裏は低き垣なり花あしび 輝子
駆け出せばその速きこと春の鹿 幹三
花冷えや靴音高き句会場 洋一
盛んなれ氷室神社の老い桜 兵十郞
トンネルを抜ければ大和春日燦 瑛三
春の雲五重塔をよけて浮く 眞知子
五重塔露伴を偲ぶ奈良の春 洋一
◎紅白の椿八一の歌碑に散る 輝子