top of page

第625回  令和2年9月2日

兼題 燕帰る・梨(幹三)

   萩・良夜(暁子)

 

選者吟

青年のチェロ背負ひ来る良夜かな   幹三

梨が好き冷してあればもつと好き

ぐい呑は父の手びねり良夜かな

しなやかに我(が)をとほしをり乱れ萩 暁子

てらてらと魔女の鼻めく唐辛

名月や昼間のことのもう遠く

 

選者選

幹三選

ゴンドラを降りた所は萩の道     朱美

乱れ萩向かふを通る知らぬ人      橙

燕帰り入替りたるボランティア    言成

◎永遠の端つこにいて良夜かな   眞知子

◎美しき寡婦と分ちし梨一つ     瑛三

唐辛子の山大道にソウルかな     瑛三

◎名月や訛り賑はふ屋台酒      正信

ふと目覚め机上あかるき良夜かな   洋一

嵐近し花こぼしつつ萩くくる     瑛三

てらてらと魔女の鼻めく唐辛     暁子

親兄弟いづくにゆきしこの良夜     乱

天国にも夜はあるのかこの良夜    瑛三

◎しなやかに我をとほしをり乱れ萩  暁子

子ら集め夫の剝くなりラ・フランス  輝子

母に似てわたしも堅き梨が好き   かな子

少年の剝く梨の皮厚かりき      邦夫

おさがりの梨の甘かり新仏      瑛三

いつまでも歩いてゐたき良夜かな   暁子

箸先の秋刀魚の腸や帰国の夜     正信

法師蝉リズムを変へて鳴きやみぬ   言成

◎タクシーの窓いつぱいに良夜かな   橙

◎一水に触れむばかりに萩白し   太美子

先の世の人と語らむ良夜かな    眞知子

走る影見逃してやる良夜かな     和江

チャルメラを聴くともなしに良夜かな 安廣

 

暁子選 

ゴンドラを降りた所は萩の道     朱美

山萩の花とは見せず散り敷きぬ   兵十郎

落日の中へ燕の帰りゆく       安廣

◎新種とてみなで見送る梨出荷    洛艸

夫は留守かかる良夜の独り酒    かな子

◎仰ぎ見る月に憂ひの身も澄めり   茉衣

◎ぐい呑は父の手びねり良夜かな   幹三

閂も門も乾きて萩零る        幹三

唐辛子の山大道にソウルかな     瑛三

集合は橋の下らし燕去ぬ       輝子

名月や訛り賑はふ屋台酒       正信

乱れ萩くぐりくぐりて本堂へ     洛艸

ふと目覚め机上あかるき良夜かな   洋一

卒寿こえあと幾度の良夜かな     嵐耕

鉄塔に烏動かず秋夕焼        安廣

ひとときを無心でいたしこの良夜  眞知子

◎子ら集め夫の剝くなりラ・フランス 輝子

庭師入り庭端然と良夜かな     太美子

真緑の怒りの如く唐辛子       幹三

◎金婚をひと区切りとし良夜なる  兵十郎

唐突に燕は去んでしまひけり    かな子

比良山に猿鳴き交はす良夜かな     昴

旅ゆけばチロルハットの夏祭     遊子

bottom of page