待兼山俳句会
第591回 平成29年5月15日
兼題 初夏・筍(浩一郎)
羊蹄の花・海亀(幹三)
卓上に 芍薬、紫蘭、山法師、苺
選者吟
初夏の風入れて帰らぬ夫を待つ あや
海亀に逢ひに故郷を訪ひし夫
美しき春の闇残し逝きし夫
初夏や身ぬちにいのちふつふつと 浩一郎
物語それぞれにあり海亀来
ぎしぎしの花ままごとのままとせる
羊蹄や渡ればたわむ板の橋 幹三
羊蹄の花や線路は錆ぶままに
羊蹄の花踏みながら少年来
選者選
あや 選
越境の筍おいしく頂けり かな子
即売の筍を掘る鍬の音 京子
登校の白き子の列更衣 洋一
初夏や着迷ふてゐる朝支度 太美子
柔らかな筍の身に鍬のあと 暁子
湧水のをちこちにあり初夏の谷 兵十郎
朝掘りといふ筍の香と湿り 太美子
初夏や生れし初孫伸びをする 乱
羊蹄や平凡てふは逞しき 翠
浮き浮きと歩く通りや樟若葉 邦夫
長岡京筍食つて遺跡みて 瑛三
初夏やジョッキ触れ合ふ音のして 暁子
欠けし鰭振り海亀の海を恋ふ 兵十郎
砂まみれ海亀ゆくり波に向く 翠
さやさやと川面を流る初夏の香や 胡蝶夢
幼問ふ海亀どこで眠るかと 瑛三
ひとときを森の新樹に抱かれて 邦夫
海亀の来る浜照らす望の月 言成
満天の星海亀の浜照らす 嵐耕
初夏や二の腕白き少女たち かな子
海亀の跳ねて踊りて潜りけり 浩風
海亀の未来を托す白砂かな 太美子
産み終へて去る海亀に月優し 安廣
山法師高く活けたる白磁花器 幹三
筍を湯掻く妻の背日本酒を 邦夫
人まばら葉桜の道すがすがし 茉衣
リンゴ咲く初恋の人も老いにけり かな子
初夏や身ぬちにいのちふつふつと 浩一郎
葉桜の揺るる隙間ぞ真青なる 邦夫
届きたる筍山の土香る 言成
楠新樹てつぺんの枝風吹きて 橙
瑠璃色の切るには惜しき蜥蜴の尾 幹三
浩一郎 選
登校の白き子の列更衣 洋一
板の間の影くつきりと初夏の朝 橙
初夏や木々の香に酔ふ山路かな 安廣
◎海亀に逢ひに故郷を訪ひし夫 あや
筍の皮を落して少し伸び 安廣
浮き浮きと歩く通りや樟若葉 邦夫
初夏の風入れて帰らぬ夫を待つ あや
律義なる祖母ありし日よ更衣 かな子
羊蹄の明るく咲きし川の端 元彦
◎ひとときを森の新樹に抱かれて 邦夫
◎満天の星海亀の浜照らす 嵐耕
産み終へて去る海亀に月優し 安廣
ほこほこと膨らみゐたる山若葉 橙
山法師高く活けたる白磁花器 幹三
母に供ふ筍うすく柔らかく 輝子
初夏の雲ひとつ行く空の碧 輝子
吟行に来て筍を買ひにけり 暁子
◎羊蹄の花や線路は錆ぶままに 幹三
◎本棚の整理や初夏の風通る 翠
風は初夏銀輪光る通学路 瑛三
身に余る鍬で筍掘る子かな 安廣
◎開帳の秘仏めぐりも京の初夏 瑛三
上着をば腰に結はへて初夏の旅 洛艸
葉桜の揺るる隙間の真青なる 邦夫
◎夏来る若き大工の高笑ひ 和江
亀鳴くはかかるさびしき夕なるや かな子
藤棚の千の花房水鏡 京子
初夏の海峡大橋風渡る 昴
美しき春の闇残し逝きし夫 あや
海亀の来さうな夜や寝つかれず 洛艸
幹三 選
◎初夏の旅の鞄の軽きかな 暁子
尋めゆけば人住まぬらしこごめ花 かな子
浮き浮きと歩く通りや樟若葉 邦夫
いつになく筍飯はお代はりし 洛艸
羊蹄の花の大きを抜き置かる 兵十郎
海亀の上がるを待ちて村総出 暁子
山下るみな筍を手に提げて 浩一郎
欠けし鰭振り海亀の海を恋ひ 兵十郎
朝一番開ける窓から花水木 茉衣
◎律義なる祖母ありし日よ更衣 かな子
見はるかす海亀棲める海の碧 輝子
◎羊蹄の明るく咲きし川の端 元彦
筍の皆曲がりたる宇陀の里 兵十郎
ほこほこと膨らみゐたる山若葉 橙
◎母に供ふ筍うすく軟らかく 輝子
羊蹄の花を手折りて奥津城へ 浩風
羊蹄の花まだ青く雨もよひ 言成
トロ箱にぴたとおさまる明石だこ 橙
日も風も人の所作さへゆるき初夏 眞知子
◎初筍や友の息災疑はず 浩風
はつ夏や木々匂ひ来る風の道 京子
六甲の山なみ黒く初夏の朝 嵐耕
亀鳴くはかかるさびしき夕なるや かな子
初夏なれやきらりと光る盆の窪 浩風
藤棚の万の花房水鏡 京子
海亀の来さうな夜や寝つかれず 洛艸
◎筍の重きを下げて長話 眞知子