待兼山俳句会
第627回 令和元年10月21日
兼題 秋深し・鵯(幹三)
団栗・草紅葉(暁子)
選者吟
団栗の硬き涙の如く落つ 幹三秋深し駝鳥の長きまつ毛かな
恐竜の埋る谷あり泡立草
団栗を拾ひ幼き日を拾ふ 暁子この声は鵯か尾の影よく動く
幾樽もワイン眠らせ秋深む
選者選
幹三選
なほざりにせし一画の草紅葉 太美子
天国へ昇る階段いわし雲 りょう
尾根に出て空開けたり草紅葉 昴
アイロンの気持ち良き事秋深し 橙
椎の実を煎れば香りは山のもの 兵十郎
木道に熊めく歩荷草紅葉 和江
◎団栗が一つ残つてレゴの中 朱美
秋さぶやまた探し物してをりぬ 翠
竹やぶの裏の瀬音や秋深し 邦夫
城壁の微かな隙間草紅葉 洛艸
頭ごと喰らふ秋刀魚の火の匂ひ 正信
◎枯山水に黙分け合うて秋惜む 乱
◎淡きものいつか増え来て秋深む 眞知子
みやこ跡風ひたすらに花芒 輝子
秋深し老いの背丈の縮みたり かな子
◎雨上がり山家俄かに鵯の声 盛雄
◎鵙一声すこやかな朝迎へけり 嵐耕
老健に榠樝実るや黄金に 乱
靴底に団栗丸し滑るまじ 翠
◎吾は何をせしか鵯声の鋭し 乱
ふはふはと上に向かうて泡立草 橙
◎迷路めく人工島や鵯の樹々 正信
縄跳の足しなやかに草紅葉 安廣
大観の愛でし酒注ぐ夜長かな 遊子
団栗や城下は清き水の 昴
都心にも廃校ひとつ泡立草 輝子
この声は鵯か尾の影よく動く 暁子
坂道に団栗だまり 言成
秋深い山の匂ひをまとひ来し 昴
凸凹に匂うてみたき榠樝の実 橙
暁子選
尾根に出て空開けたり草紅葉 昴
鵯の渡りか群の動き初む 言成
椎の実を煎れば香りは山のもの 兵十郎
◎木道に熊めく歩荷草紅葉 和江
秋深し石組み昏き枯山水 瑛三
焼落ちしノートルダムや秋夕焼 安廣
◎団栗のポコンと弾むボンネット 安廣
城壁の微かな隙間草紅葉 洛艸
蹲踞に鵯赤き実を食ひ散らし 太美子
枯山水に黙分け合うて秋惜む 乱
団栗に子の手のぬくみありにけり 幹三
◎モーニングステーキ喰らふ秋の旅 正信
鵯一羽波状飛行のしなやかさ 安廣
みやこ跡風ひたすらに花芒 輝子
眼下には多島の夕焼旋回機 遊子
リハビリの杖に絡まる草紅葉 正信
穂芒や句座に詩神を招き寄せ 瑛三
◎団栗の硬き涙の如く落つ 幹三
廃線の枕木埋めて草紅葉 安廣
◎秋深し猟師手ぶらで山降り来 洛艸
恐竜の埋る谷あり泡立草 幹三
熟れ時をよく知る鵯や嘴の鋭き 輝子
船番所跡てふ碑文草紅葉 兵十郎
◎北の涯湿原燃ゆる草紅葉 瑛三
草紅葉木道果てて人も消ゆ 乱
懐しやアルハンブラ宮石榴の実 茉衣
団栗の小箱旅情もつまりをり 太美子