待兼山俳句会
第610回 平成30年9月3日
選者吟
共に眠るものを待つかに穴まどひ 幹三
ていねいに玄関掃くや鰯雲
月光の運河に跳ねる魚のあり
秋茄子や愁ひの色の濃紫 暁子
議論終へ才女烈女ら葡萄食む
言ひたきを言はずに帰る月夜かな
選者選
幹三選
鰯雲下校の子らに讃へられ 言成
立ちすくむ母子尻目に穴まどひ 輝子
房ひとつ掌からはみ出し葡萄狩る 盛雄
初秋の風の匂ひの中にゐる 橙
鰯雲空腹忘れ遊びし日 翠
月掘るな異常気象の気にかかる 元彦
◎魂を売りたくなりし月今宵 輝子
海峡を渡れば踊り渦のごと 遊子
◎穴まどひぐるり巡りて戻り来ぬ 兵十郎
鰯雲吾のこころの小さきこと 太美子
鰯雲大魚来たかに崩れけり 翠
子供らに指さされゐる穴惑ひ 言成
さらさらと野道を逃げる穴まどひ 乱
◎黙々と土を平(なら)すや鰯雲 邦夫
穴惑ひ消ゆ草揺らすこともなく 輝子
丘すべて葡萄たわわにライン川 かな子
住みなれて今日も高きに鰯雲 嵐耕
銀(しろがね)ほのか夜のしじまの鰯雲
安廣
◎葡萄棚のほどよき高さくぐりゆく 兵十郎
秋茄子の蔕にかすかな朝湿 兵十郎
もつれたる悩み解き得ず曼珠沙華 瑛三
◎日溜りは減るばかりなり穴まどひ 邦夫
ささめくや小樽運河のいわし雲 かな子
◎河内野や王家の谷の葡萄棚 瑛三
ブラインド閉める手を止め月仰ぐ 茉衣
◎熱の子の冷えた葡萄を次々と 眞知子
遊ぶ子に鎌首擡ぐ穴まどひ 元彦
◎老いどちも戸外に出でよ鰯雲 翠
樹々の梢かがやき増して小望月 太美子
暁子選
月光の運河に跳ねる魚のあり 幹三
うねうねと大河渡りし穴まどひ 元彦
残暑の日行路死亡の記事を見る かな子
人の居ぬ校庭洗ふ青き月 安廣
老病も死苦も忘れる星月夜 りょう
穴まどひ杣道よぎるおらの道 瑛三
妻の手を引きリハビリへ鰯雲 翠
時として雲に憩うて月のゆく 邦夫
月の空より父母の声ありにけり 邦夫
◎生きるとは迷ふことなり穴まどひ 翠
◎共に眠るものを待つかに穴まどひ 幹三
◎丸丸と尻の張りたる秋の茄子 安廣
海峡を渡れば踊り渦のごと 遊子
この窓から月に帰らむ吾は魔女 輝子
穴まどひぐるり巡りて戻り来ぬ 兵十郎
大嵐の予兆や暈の月天心 瑛三
鰯雲吾のこころの小さきこと 太美子
鰯雲大魚来たかに崩れけり 翠
◎穴まどひいつもわたしははずれつ子
かな子
登り窯有田の里に登る月 盛雄
パラオ行きパスポート切れ穴まどひ 和江
◎穴まどひ消ゆ草揺らすこともなく 輝子
◎仏前の珠玉の葡萄年金日 りょう
◎舟屋みな開け放たれて鰯雲 洛艸
ささめくや小樽運河のいわし雲 かな子
河内野や王家の谷の葡萄棚 瑛三
夕映えの大阿蘇いわし雲高し 盛雄