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第666回(吟行) 令和4年10月30日

会場  大阪市北区民センター・第1会議室


出席者 瀬戸幹三・山戸暁子・鈴木輝子

    鈴木兵十郎・寺岡翠・宮尾正信


吟行地 大阪市大阪天神橋筋商店街界隈

 

新型コロナウイルスの新規感染者数は、緩やかな減少を維持し、吟行会を無事に開催する事が出来ました。天満宮、堀川戎、太融寺等の歴史ある神社仏閣及び日本一長いアーケードとして有名な天神橋筋商店街を巡りました。大阪の様々な姿と触れ合い、句作に耽る楽しい時を過ごす事が出来ました。俳句の楽しさを実感した一日でした。

選者吟
眠たくてもう眠りさう七五三      幹三
吸ひ込んでみたくなるよな秋の雲
ホルモンを炙る男に秋行けり
秋さびしやせ猿演技しくじりて     暁子
地下鉄の出口四角い秋の待つ
あるといふ句碑を探すや秋日和

      
幹三選

扇町広場集会今も銀杏散る        翠
秋たけなは救世軍のたからかに     輝子
松茸売お嬢と声を掛け来る      兵十郎
◎あるといふ句碑を探すや秋日和    暁子
◎地下鉄の出口四角い秋の待つ     暁子
◎一本が銀杏黄葉となりし道     兵十郎
昼席の券買ふ列や秋日傘        暁子
金輪際動かぬ亀や秋高し        暁子
古橋の挑みし地なり銀杏散る      輝子
冬めくや街に白蛇の御神木       正信
◎欅まで黄葉移ろひ来しひと日    兵十郎         
草の実や飛込台の跡に座す      兵十郎          
マニ車回し商都の秋惜しむ       正信
大塩の碑に秋の蝶去りやらず      輝子
算盤を飾る老舗の温め酒        正信
暦売る店ありちよつと覗き見る     輝子
帰り咲く合歓の花弁のいと細く    兵十郎
◎立呑みの肩の触れ合ふ暮の秋     正信
明王の見つむる闇や冬近し       正信


幹三特選句講評

・あるといふ句碑を探すや秋日和    暁子
 個人の意見であるが、句碑というもの、実は見たところでどうということはない。しかし、あると言われれば探したくなるのが人情。好日のゆとりを感じた句。

・地下鉄の出口四角い秋の待つ     暁子
 階段下から逆光で見た出口。さあ晩秋の町に出るぞという気分が伝わってくる。その町には何があるのか、どんな光景があるのであろう。

・一本が銀杏黄葉となりし道     兵十郎
 並木の中でいちばん早く黄葉した樹。日当たりも土壌も同じと思われるが、なぜか遅速がある。通り過ぎて行く晩秋の道でふと気づいたことが句に書き留められた。

・欅まで黄葉移ろひ来しひと日    兵十郎
 前句の続編とも思える句。欅の葉が黄色と緑のまんだらになって来ている。紅葉・黄葉の途中経過を楽しむのも俳人である。

・立吞みの肩の触れ合ふ暮の秋     正信
 立飲み屋が昼間から満員の町。飲んでいない方が少数派と思えるのである。店外から観察して作句を試みたが、どうも「接近」できない。そこへこの句である。なるほど、視点を店内に入れればいいのか。するとカウンターに向かって立つ男女の顔や背丈や賑わいが描けるのである。今日の吟行の後半のハイライト句。


暁子選
銀杏黄葉元飛び込み台ベンチとし     翠
ホルモンを炙る男に秋行けり      幹三
◎帰ろうと手を引く姫や七五三    兵十郎
白蛇穴に入りたるあとの祠かな     幹三     
参道の壱銭焼きや薄紅葉        正信 
秋深し左利き庖丁飾る店         翠
古橋の挑みし地なり銀杏散る      輝子
◎プール跡5番の台に座すや秋     幹三
◎眠たくてもう眠りさう七五三     幹三
草の実や飛込台の跡に座す      兵十郎
大塩の碑に秋の蝶去りやらず      輝子 
算盤を飾る老舗の温め酒        正信
◎芸終へて猿の見てゐる秋の空     幹三
◎八百屋開くまづ並べたり松茸を    輝子


暁子特選句講評

・帰ろうと手を引く姫や七五三    兵十郎
・眠たくてもう眠りさう七五三     幹三  
 澄んだ秋空のもと、森閑とした天神さんを思い浮かべていたが、行ってみると境内は七五三の家族連れで大賑わいだった。腰を下ろしてしばらく眺めていると、子どもの性格、親子関係、普段の家庭の様子なども想像され、興味深かった。

・芸終へて猿の見てゐる秋の空     幹三
 境内の隅に猿回しがあった。「猿回し」は新年の季題なので、詠むには工夫がいった。痩せて寂しそうな猿だった。         
    
・プール跡5番の台に座すや秋     幹三
 扇町公園では、元プールの飛び込む時の台がベンチになっているそうだ。その昔、戦後の日本を元気づけた「フジヤマのトビウオ」古橋広之進らが競ったプール跡。5番というのは古橋のコース。下五の表現が一寸苦しそうだが、感慨無量。
 
・八百屋開く先づ並べたり松茸を    輝子
 日本一長い天神橋筋商店街。八百屋の店頭に恭しく松茸が並べられていた。思わず足を止めたが、やはり外国産であった。

  
互選三句
輝子選
秋さびしやせ猿演技しくじりて     暁子
眠たくてもう眠りさう七五三      幹三
プール跡5番の台に座すや秋      幹三
 プール跡を探すのに苦労した。古橋はきっと5番コース。

 

兵十郎選
算盤を飾る老舗の温め酒        正信
芸終へて猿の見てゐる秋の空      幹三
立呑みの肩の触れ合ふ暮の秋      正信
 晩秋の天六裏通りの立呑屋の雰囲気が良く出ている。


正信選
地下鉄の出口四角い秋の待つ      暁子
芸終へて猿の見てゐる秋の空      幹三    
吸ひ込んでみたくなるよな秋の雲    幹三     
 作為の無きが如き素直で且つ的確な表現。


翠選
参道の壱銭焼きや薄紅葉        正信
帰り咲く合歓の花弁のいと細く    兵十郎         
古橋の挑みし地なり銀杏散る      輝子
 古橋の活躍は今でも胸が熱くなります。
 
自選句
ハロウィンの南瓜大小花舗ひらく    輝子
帰ろうと手を引く姫や七五三     兵十郎
立呑みの肩の触れ合ふ暮の秋      正信
扇町広場集会今も銀杏散る        翠

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