待兼山俳句会
第611回 平成30年10月15日
兼題 秋澄む・囮(幹三)
野菊・秋の暮(暁子)
卓上に 泡立草・すすき・秋明菊・野菊 当季雑詠 通じて八句
選者吟
鰡跳んで鉄の臭ひのする運河 幹三
草の花活けて小さき野のできぬ
野路菊をひとりひとりが見てゆきぬ
手をつなぐことたえてなし秋の暮 暁子
人の世にも鳴ける囮のありぬべし
野紺菊摘みしひと日を幸せと
選者選
幹三選
◎行く人の足早さみし秋の暮 瑛三
澄む秋の路地の奥より機の音 洛艸
畑すみに野菊生ふるを許されよ 輝子
人去りてことのは残る秋の暮 遊子
三ツ星の沈む早さや秋の暮 言成
天高し鳥居くぐれば伊勢路なる 遊子
秋空や消えなんとする雲一つ 言成
◎足音みな我家素通り秋の暮 翠
野紺菊摘みしひと日を幸せと 暁子
秋の暮心せくまま厨ごと 眞知子
口笛で促せられてゐる囮 洛艸
◎手をつなぐことたえてなし秋の暮 暁子
見上ぐれば吸ひ込まれさう秋澄めり 暁子
野菊生ふる径のいつしか山に入る 輝子
◎秋の空飛行機雲で切つてみる 橙
少年の眼をして囮なつかしむ 輝子
子に囮持たせ主の藪を漕ぐ 洛艸
囮鳴く黐(もち)置く枝に囲まれて 兵十郎
竜胆の濃き青色の奥の底 橙
◎気の強き少女がひとり野菊摘む かな子
ひと日鳴くわが身囮と知らぬまま 暁子
稿すすむペンの軽ろさや秋灯下 洋一
◎てぎはよく脚を外すや囮守 邦夫
繰り上げの退院のわれ萩迎へ 洋一
ぞろぞろと牛は牧舎へ秋の暮 洛艸
◎鳥かごや優しき兄の手に囮 昴
サッカーボールベンチに一つ秋の暮 翠
夫と追ふ「希望」の軌跡秋夕べ かな子
暁子選
◎野菊坂急ぐ人たち里歌舞伎 和江
ふにやふにやのペンギンの雛秋麗 橙
◎蕎麦刈るや一茶の里は向ふ山 輝子
◎太陽の塔も古りたり秋夕日 かな子
秋麗パンダの子どもの黒き足 橙
高原へ最後の曲り野紺菊 兵十郎
◎草の花活けて小さき野の出来ぬ 幹三
◎人去りてことのは残る秋の暮 遊子
秋暮れて蝦夷地の亀裂地震深し 盛雄
人知れず咲ける野菊や今日の幸 安廣
鯔跳んで鉄の臭ひのする運河 幹三
足音みな我家素通り秋の暮 翠
七曲り十四曲り野菊晴 兵十郎
八十路来て人の恋しや秋の暮 嵐耕
仰ぎつつ交す笑顔や野菊晴 嵐耕
◎草刈りて積めばいささかミレー風 遊子
運転席に野菊を挿して田舎バス 安廣
澄む秋や空を仰いで深呼吸 言成
秋澄みて高麗青磁展示会 りょう
秋澄むや今日も達成一万歩 輝子
繰り上げの退院のわれ萩迎へ 洋一
娘を背負ひ野路菊の中夫待つ りょう
秋の暮釣人一人川の中 昴
秋の暮ブルーシートのとれぬ屋根 眞知子
夫と追ふ「希望」の軌跡秋夕べ かな子
◎ハーケン打つ二〇〇〇メートル秋澄みて
安廣
帰り支度急ぐ庭師や秋の暮 翠