top of page

第595回 平成29年9月4日

選者吟

おどろきぬ薄分くれば人出でて   浩一郎

秋出水家の前まで来し記憶

蟷螂に鎌もてひたと構へらる

 

青き背を反りくり返し子かまきり  幹三

この辺に道のあるはず秋出水

夜食とりながらも幾何を解いてをり

 

選者選

浩一郎 選

土の色して蟷螂の怒りをり     輝子

一斉に手を止め夜食始まりぬ    洛艸

縋り来し蟷螂連れて山おりる    暁子

野のものと違ふ紅白曼珠沙華    翠

駅前へ子らと夜食のきつねうどん  和江

携帯に届く警報秋出水       洛艸

淀川の湾処ぐるりと大芒      元彦

くちなはのゆるゆる分け入る芒原  昴

水引いてよりの苦労よ秋出水    瑛三

◎岸噛みて逆巻き奔る秋出水    安廣

わけ入りて朝日輝く花芒      嵐耕

芒原一列揃ひの帽子行く      眞知子

つつがなく在すや我が師花芒    輝子

学ぶ子に母の手立ての夜食かな   洛艸

サイレンの夜空切り裂く秋出水   瑛三

秋出水稲穂の揺らぐ水の中     昴

墨染の僧行く道や曼珠沙      安廣

◎ひぐらしやひとり暮しの夕支度  かな子

誰か来る気配近づく芒原      輝子

母の愛でし秋海棠よ薄き紅     安廣

蝉抑へ込む力どこから痩蟷螂    瑛三

◎日当ればしろがねとなる芒かな  暁子

夜食摂る工事場の灯の明明と    安廣

身構へし蟷螂残し去りにけり    暁子

◎かなかなやわが影さびし日暮どき かな子

陸上部の子ら駆けて行く芒道    瑛三

彼岸花残りし草刈る畔の道     洋一

◎満天の星のつぶやく芒原     嵐耕

果てしなく銀の風吹く芒原     安廣

◎秋出水早や再建の槌の音     安廣

 

幹三 選

◎土の色して蟷螂の怒りをり    輝子

心根も面も隠し風の盆       乱

蟷螂のゆらりゆらりと風まかせ   兵十郎

◎一斉に手を止め夜食始まりぬ   洛艸

秋出水鷺の足跡残し退く      兵十郎

縋り来し蟷螂連れて山おりる    暁子

秋出水一直線の足の跡       兵十郎

しなやかにほつそりひらき花薄   昴

右肩にとんとぶつかる蜻蛉かな   橙

当直の夜食ににぎり飯二つ     輝子

声だけが頼りの芒迷路かな     安廣

一切の夜食を絶ちてなほ肥満    言成

天井に月の光の窓の在り      橙

◎鎌上ぐる蟷螂の目の哀しかり   邦夫

誰か来る気配近づく芒原      輝子

秋出水窓から空を見るばかり    昴

蟷螂の拝みに気持和らぎぬ     邦夫

◎鉦たたきよく鳴く家を越しにけり かな子

背を伸ばし飛ぶかまきりの早さかな 兵十郎

蟷螂の小首傾げて歯向かへる    洛艸

夜食とる浪人生のつくねんと    輝子

身構へし蟷螂残し去りにけり    暁子

行き着けば芒の空の眩しかり    邦夫

彼岸花残し草刈る畦の道      洋一

◎蟷螂と語りて老いの庭手入れ   翠

◎独り居の体を抜けてゆく野分   陽子 

bottom of page