待兼山俳句会
第609回 平成30年8月20日
選者吟
床の間にどんと据ゑたる庭かぼちや 浩一郎
墓まゐり石に囲まれ座す安堵
娘の去ねばひとりの家居秋めいて
南瓜切る南瓜のやうな顔をして 幹三
秋めくや町の上には飛行船
まらうどのごつんと床に置く南瓜
秋めくや使はぬ二階へ上りみる 暁子
唐突に秋めく朝の来りけり
古けれど気に入りの鍋南瓜煮
選者選
浩一郎選
◎煮南瓜や戦時の母は強かりし 翠
縁者なき十九の兵の墓洗ふ 輝子
◎南瓜切る南瓜のやうな顔をして 幹三
林間の木漏れ日をゆく墓参かな 盛雄
独り行く朝の高原秋めける 洛艸
華やかに咲いて儚く散る芙蓉 茉衣
南風(はえ)はらみ乙女ら立てり芭蕉林 墓参り隣は無縁となりたるや 暁子
◎秋めくや町の上には飛行船 幹三
大南瓜刃を寄せつけぬ面構へ 昴
秋めくや久方振りに書肆に寄る 輝子
月光に芭蕉葉の影人のごと 暁子
挨拶を交はしつ散歩秋めきぬ 洛艸
朝の間の雲のひろごり秋めきぬ 太美子
墓石のばつたを追うて水注ぐ 安廣
◎唐突に秋めく朝の来りけり 暁子
背に受ける秋めく陽ざし和らかき 昴
かぼちや売る老婆の笑みの皺深し 安廣
秋めくや朝な夕なの風にふと 京子
六甲の稜線あざやか秋めけり 洋一
◎墓詣この世にゐますもう少し 輝子
滄海に眠る兵士よ墓洗ふ 輝子
旅終ふや我が家の門の秋めきて 翠
紅芙蓉いもうとのため兄乞ひぬ 茉衣
秋めくや使はぬ二階へ上りみる 暁子
ほくほくとかぼちやの味は関西弁 和江
初南瓜ほくほくと煮て夕の膳 安廣
いつの日か我も入らむ墓洗ふ 洛艸
◎芭蕉葉や島の生活(くらし)の大らかに
太美子
秋めいて米研ぐ水の心地よさ りょう
戒名をなぞりて洗ふ墓参 安廣
南瓜殿土間にあぐらをかいてをり 瑛三
◎異邦人のごとふるさとの墓参り かな子
縁側に南瓜転がる生家かな 盛雄
秋めくや会ふ人ごとの喜色かな りょう
畑隅に末生り南瓜転がりぬ 洛艸
◎掃苔や未だ報告出来ぬこと 太美子
日もすがら新涼の風通る日よ 太美子
古けれど気に入りの鍋南瓜煮る 暁子
選句三十終へ身ほとりの秋めきぬ 翠
幹三選
ていねいに入れたお茶飲む秋めく日 眞知子
林間の木漏れ日をゆく墓参かな 盛雄
◎包丁の抜きさしならぬ大南瓜 太美子
秋めくや猫たんたんと老いゆけり 翠
◎秋めきて嶺々一斉に近くなり 兵十郎
床の間にどんと据ゑたる庭かぼちや 浩一郎
大南瓜刃を寄せつけぬ面構へ 昴
秋海棠蔓延り手水鉢塞ぐ 乱
◎去りゆけるもの見送りぬ秋めく日 眞知子
朝の間の雲のひろごり秋めきぬ 太美子
墓石のばつたを追ひて水注ぐ 安廣
◎芭蕉葉にくるまれ寝たきひと日かな
兵十郎
秋めけるもののひとつに空の青 輝子
◎掃苔や互ひの祖父の懐古談 邦夫
墓詣この世にゐますもう少し 輝子
旅終ふや我が家の門の秋めきて 翠
秋めくや使はぬ二階へ上りみる 暁子
秋めいて米研ぐ水の心地よさ りょう
◎異邦人のごとふるさとの墓参り かな子
墓まゐり石に囲まれ座す安堵 浩一郎
◎秋めくや会ふ人ごとの喜色かな りょう
掃苔や未だ報告出来ぬこと 太美子
わらわらと芭蕉葉騒ぎ闇落ち来 安廣
古けれど気に入りの鍋南瓜煮る 暁子
暁子選
縁者なき十九の兵の墓洗ふ 輝子
炎帝に召されし友の二人かな 元彦
秋めくや猫たんたんと老いゆけり 翠
秋めきて嶺々一斉に近くなり 兵十郎
この風に飛び立つ構へ芭蕉かな 幹三
◎大南瓜刃を寄せつけぬ面構へ 昴
◎目瞑れば芋と南瓜の運動場 元彦
いずれ是も無縁とならむ墓参る かな子
爆ぜるとは思へぬ固さ椿の実 幹三
少年もよき父となり墓洗ふ 翠
崩落の城に寄り添ふ芭蕉かな 盛雄
南瓜や銃後の児童の代用食 洋一
秋めく日わが家も蓼科軽井沢 茉衣
◎在りし日のままの表札門火焚く 遊子
掃苔や互ひの祖父の懐古談 邦夫
◎墓詣この世にゐますもう少し 輝子
薪割りの如く南瓜と格闘す 翠
秋めきて空ターナーの絵色なり 兵十郎
芭蕉葉や島の生活(くらし)の大らかに
太美子
墓洗ふ戻りし魂と語りつつ 眞知子
◎看取りの如ひたすら熱き墓洗ふ 京子
異邦人のごとふるさとの墓参り かな子
三線の聞こえ芭蕉の村暮るる 幹三
転倒の球児気遣ふ赤蜻蛉 元彦
◎掃苔や未だ報告出来ぬこと 太美子
墓参天国近き山の上 茉衣
秋めく日仰ぎて雲を風を見る 眞知子