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第672回 令和5年4月17日

会場  大阪俱楽部会議室

 

出席者 瀬戸幹三・山戸暁子・小出堯子

    鈴木輝子・鈴木兵十郎・寺岡翠

    東中乱・東野太美子・平井瑛三

    向井邦夫・森茉衣・山田安廣
投句者 植田真理・碓井遊子・西條かな子

    鶴岡言成・中嶋朱美・中村和江

    西川盛雄・根来眞知子
 出席者12名+投句者8名 計20名


兼題  石鹼玉・柳(幹三)

    春日傘・春惜む(暁子)

    当季雑詠    通じて8句


選者吟
犬の見る方を眺めて春惜む       幹三    
家々を巡る流れや柳の芽           
ゆつくりと海のめくれて春の波
行く春や家を離るる子の荷物      暁子
しゃぼん玉吾に戻り来て割れにけり
春日傘たたみて子らの輪の中へ
 
幹三選 
◎シャボン玉残れるひとつ消えるまで  堯子
春日傘たたみて子らの輪の中へ     暁子
◎シャボン玉ぶるんと震へ壊れけり   盛雄
◎石段に仲好し三人石鹸玉       瑛三
万太郎はや青年に春惜しむ       和江
石鹸玉ぐにゃりと世界映りけり     真理
後ろから見よ新調の春日傘       暁子
◎青空に当たりしやうにしゃぼん玉  太美子
城内の樹々の間に間に春日傘     太美子
大きくて突ついてみたき石鹸玉     安廣
おじさんの一振りでかい石鹸玉     言成
旅立ちに岸辺の柳青青と        堯子
だしぬけに風湧き出づる柳かな     邦夫
透明のやがて七色しゃぼん玉      暁子
◎鹿せんべい高く掲げて春日傘    兵十郎
◎孫五人石鹸玉で空ふさぐ       朱美
春惜む雨のひと日もよかりけり    太美子
しやぼん玉終り故なく淋しかり     輝子
式終へしカップル祝す石鹸玉       翠
結局はみな消えにけり石鹸玉       乱
伊賀の酒桑名の酒や花巡り       遊子
しゃぼん玉吾に戻り来て割れにけり   暁子
園のベンチ柳絮払うて座りけり     瑛三
そと吹くや行きて帰らぬしゃぼん玉   暁子
落柿舎に二三句詠みて春惜む       乱
小さき杯独り汲みつつ春惜しむ     安廣
柳陰道しるべには右よしの       輝子
海老根咲き句座に静かな時流る     瑛三
◎見下ろせる里の広さや春惜しむ    安廣

 

幹三特選句講評

・シャボン玉残れるひとつ消えるまで  堯子
 大きいもの小さいもの、無数に飛び交っていたしゃぼん玉。いま目の前に浮遊してきてぽんと消えたものが、どうやら最後の一玉らしい…とここまで見ていた作者。


・シャボン玉ぶるんと震へ壊れけり   盛雄
 観察の目が生きた句である。石鹸の膜が限界を迎えた時、確かに揺れるように震えて、虹色ごとぽっと消えるのである。


・石段に仲好し三人石鹸玉       瑛三
 笑いながら歌いながらぷうぷうと吹くしゃぼん玉。三人の子が石段にぴったり収まって座っている景が浮かんだ。まことに微笑ましい。動詞が一つも無いのが効果的。
   
・青空に当たりしやうにしゃぼん玉  太美子
 青空にぶつかるしゃぼん玉とはユニーク。春の空気がとてもよく描かれていると思う。非凡な表現。すてき。

・鹿せんべい高く掲げて春日傘    兵十郎
景のよく見える句。「きゃあ」とかいう声も聞こえてくる。下五に置かれた春日傘がとてもいい仕事をしている。

・孫五人石鹸玉で空ふさぐ       朱美
 孫子の句はふだん採ることはないが、これは例外。五人の小さな口から吹き出されるしゃぼん玉で空が見えないほどだ、という。愉快ではないか。

・見下ろせる里の広さや春惜しむ    安廣
 春の色に染まるのどかな里、古代の邪馬台国を創造した。「広さ」はまた春の広さでもある。

暁子選
犬の見る方を眺めて春惜む       幹三
◎石鹸玉ぐにゃりと世界映りけり    真理
青空に当たりしやうにしゃぼん玉   太美子
◎舟運に栄へし町の青柳        遊子
◎城内の樹々の間に間に春日傘    太美子
大きくて突ついてみたき石鹸玉     安廣
おじさんの一振りでかい石鹸玉     言成
白秋の郷は柳の川路かな        盛雄
春日傘傾げ内緒の話かな        輝子
鹿せんべい高く掲げて春日傘     兵十郎
◎春惜む雨のひと日もよかりけり   太美子
ルノアール想ひ出させる春日傘     安廣
石鹸玉天地を蔵し瓦解せり        乱
ゆつくりと海のめくれて春の波     幹三
すんすんと鉄路土筆の息吹かな     盛雄
石舞台出でて現世の春日傘      兵十郎
草野球応援に舞ふ春日傘        安廣
◎姉見舞ふ眠り続けて春を生き     堯子
落柿舎に二三句詠みて春惜む       乱
揺れ揃う景美しき遠柳        太美子
地味なのか華やかなのか花馬酔木    茉衣
家々を巡る流れや柳の芽        幹三
柳陰道しるべには右よしの       輝子
海老根咲き句座に静かな時流る     瑛三


暁子特選句講評

・石鹸玉ぐにゃりと世界映りけり    真理
 しゃぼん玉に映る景色を描写するのに「ぐにゃり」はよくも見つけられた表現だと感心した。

・舟運に栄へし町の青柳        遊子
 作者がわかると、やはり社会学者で各地の商業の歴史なども研究しておられる方だった。陸路より水路の方が効率の良かった時代に栄えた町、川沿いには白壁の蔵がまだ残っているだろう。

・城内の樹々の間に間に春日傘    太美子
 まるで錦絵を見ているようだ。城の周りは広く、樹々の若葉が一斉に燃え始めている。その間を縫うように色とりどりの春日傘が動いている。花のあとも賑わう城の天守閣から俯瞰したような風景。

・春惜しむ雨のひと日もよかりけり  太美子
 三月の風、四月の雨といわれる。そういえば三月には東風、涅槃西風、貝寄風など風の季題がある。四月は花の雨が好んで詠まれる。長く続く雨天を菜種梅雨というが、梅雨といってもどこか明るく、植物の成長はこれで一気に進み、やがて目の覚めるような緑の世界が展開される。雨で外出を諦めた寂しい気分も、さみどりの庭を眺めているとやがて落ち着いてくる。


・姉見舞ふ眠り続けて春を生き     尭子
 中七下五は姉上のことであるから「眠り続け春を生き抜く姉見舞ふ」ではどうでしょうか。

参加者自選句
花びらを掃き集めつつ春惜しむ     朱美
海老根咲き句座に静かな時流る     瑛三
白鶴へおしゃれ姉妹の春日傘      和江
緑風に浮き世の憂さを石鹸玉     かな子
春日傘疎水の縁を楚々として      邦夫
まだ残る花びら眺め春惜しむ      言成
花開きまた花散るを留めえず      堯子
想ひ出にはいつもやさしさ春の星   太美子
春日傘傾げ内緒の話かな        輝子
リフト行く空に色あり春日傘     兵十郎
春日傘景色に添えるエレガンス     茉衣
束の間の花びらの道春惜しむ     眞知子
石鹸玉ぐにゃりと世界映りけり     真理
老病死つい死を忘る春日傘        翠
シャボン玉ぶるんと震へ壊れけり    盛雄
見下ろせる里の広さや春惜しむ     安廣
森の闇抜ければ眩し新樹光       遊子
異人らと達磨の寺に春惜む        乱

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