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第603回 平成30年4月16日

 

選者吟

顔寄せてきく沈丁の香りかな   浩一郎

背の高き夫婦住みけり燕の巣

燕の巣元は庄屋の高き梁

ふくらみて弥生の山となりにけり 幹三

音のなき雨降る夜の沈丁花

この村の土の色なる燕の巣

選者選

浩一郎 選

校門の沈丁の香や巣立つ今日   安廣

農を継ぐ孫はなしとぞ沈丁花   翠

気鬱なる日も沈丁の香を纏ひ   太美子

取り入れる沈丁の香と新聞を   乱

◎沈丁の香の漂ひて闇重し    安廣

◎手を打てば鯉の寄り来る沈丁花 昴

老犬と弥生の風に吹かれたる   橙

鋤と鍬売る軒先に燕の巣     幹三

老いの身に弥生の風の柔らかく  邦夫

◎この村の土の色なる燕の巣   幹三

稜線の空ににじみし弥生富士   和江

弥生くるふるさとの山なつかしき 嵐耕

稚児行列弥生の町の明るさよ   和江

濡れ縁に日射しやさしき弥生かな 昴

◎ふくらみて弥生の山となりにけり 幹三

免許証の返納済める弥生尽    遊子

燕の巣印度料理の軒先に     兵十郎

陵の木々みな萌えて弥生なる   輝子

◎穏やかな日日沈丁の風の中   京子

雨意の庭沈丁の香に沈みゐて   瑛三

◎憂きことは措きて好日弥生かな 輝子

途中下車して見る駅の燕の巣   輝子

母逝きてより弥生は淋し月    かな子

◎音のなき雨降る夜の沈丁花   幹三

薄れ行く記憶手繰るや汐まねき  昴

手入れよき園に弥生の日と風と  邦夫

諍ひも些些たることよ沈丁花   和江

山遠く弥生の空の淡きこと    安廣

住む人の絶えて燕の巣も絶えし  輝子

沈丁の香り艶なり帝塚山     邦夫

幹三 選

◎良き日かな空は勿忘草の彩   輝子

引き潮に手を振つてゐる望潮   瑛三

燕の巣下は列なすラーメン屋   乱

見馴れたる女子アナ去りて弥生入り 洋一

静かにも老いの弥生の闌けてゆく 暁子

背の高き夫婦住みけり燕の巣   浩一郎

◎汐まねき磯の香りをかきまぜる 磨央

沈丁の香の漂ひて闇重し     安廣

老犬と弥生の風に吹かれたる   橙

潮まねきうしほ満ちくる速さかな 遊子

老いの身に弥生の風の柔らかく  邦夫

◎春の昼昼の憩のラジオかな   洋一

窓開けて弥生の空をしばし見る  眞知子

◎裏木戸に泣きしことあり沈丁花 暁子

去りゆける人呼びいるや汐まねき かな子

ランドセルかたかた走る入学式  安廣

◎燕の巣気の利く嫁でもつ酒屋  輝子

◎とつ国の人に見せばや花の雲  磨央

◎薄れゆく記憶手繰るや汐まねき 昴

我を誘ふ仕草に見えし汐まねき  洛艸

畦に座す二つの帽子弥生来ぬ   輝子

満開の花にビル街異郷めく    遊子

花惜しむことも生きてる証かな  言成

シャッター街泥新しき燕の巣   暁子

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