待兼山俳句会
第586回 平成29年2月20日
兼題 白魚・山茱萸の花(あや)
バレンタインの日
末黒の芒(浩一郎)
春浅し・梅見(幹三)
席題 卓上に 菜の花(春菜)・八朔
選者吟
梅が香にひとりのひと日しづもれる あや
ひそひそと囁き育つ薄氷
曾爾原の末黒の芒の声を聴く
隠し持つ小瓶の酒の梅見かな 浩一郎
擤(はなか)んで春といふともなほ浅し
バレンタインの日とも気付かぬままに過ぎ
カステラ切る大きな春の月の下 幹三
冴返る床を転がる硬貨かな
ざつくりと春菜を切りてたぎる湯に
選者 選
あや 選
隠し持つ小瓶の酒の梅見かな 浩一郎
暮れてゆく菜の花畑夕列車 瑛三
◎退院の車でまはる梅見かな 暁子
茹であげた春菜の色のあざやかさ 茉衣
煙る雨末黒の芒に染み透る 乱
末黒野や秘めたる命芽吹く時 安廣
白魚の美しきを如何に料理せむ 瑛三
講釈を縷縷と白魚をどり喰ひ 洛艸
春浅し行きつ戻りつする季節 眞知子
◎わが庭の黙つづきをり浅き春 太美子
遠山の木の間に揺れて春浅き 昴
草千里すぐろの芒照り翳り かな子
◎夕闇に浮ぶ白梅香り立つ 安廣
かぎろひの丘に末黒の芒かな 浩風
末黒芒萌出鶴色足元に 太美子
白魚の透明といふ色を汲む 暁子
一夜さに焼野の芒銀世界 瑛三
冴返る空の遠くへ大ジャンプ 和江
◎一椀に透ける白魚の目のかなし 太美子
真二つに割れし檜や雪に立つ 兵十郎
失恋の猫わが膝に来て眠る 暁子
ざつくりと春菜を切りてたぎる湯に 幹三
浅春の比叡颪を鷺は瀬に 瑛三
末黒野の有象無象の生死秘め 乱
山茱萸の花広ごりて空の青 京子
透き通る白魚死してただの白 乱
行く水に鷺瞑想す春浅し 茉衣
椀に浮く白魚三尾朝餉かな 嵐耕
鳥一羽走る末黒の芒はら 昴
◎カステラ切る大きな春の月の下 幹三
遠山の残雪愛でる梅見かな 昴
金星の輝き妖し浅き春 言成
浩一郎 選
◎梅が香にひとりのひと日しづもれる あや
春浅き待合室にヴィヴァルディ 輝子
退院の車にまはる梅見かな 暁子
未練なら海市の向かうに置いてこい 花帆
末黒野や秘めたる命芽吹く時 安廣
酒管弦なくも香りの梅見かな 翠
わが庭の黙つづきをり春浅き 太美子
スカートの裾吹く風や春浅し かな子
遠山の木の間に揺れて春浅き 昴
かぎろひの丘に末黒の芒かな 浩風
◎わがためのひとつ加へてバレンタインデー
輝子
遠目にも山茱萸の黄の鮮やかに 洛艸
◎春浅し探しに行かむ待つよりは 眞知子
失恋の猫わが膝に来て眠る 暁子
◎渡船場の小さきドラの音春浅し 洛艸
ざつくりと春菜を切りてたぎる湯に 幹三
跳ね落つる白魚光る四手網 元彦
春浅く花の黄色もまだ淡し 茉衣
◎バレンタインデー発達中の低気圧 みなみ
城郭を一巡りして梅見かな 洛艸
道順の自づと流れ梅見客 浩風
桜より心しづかな梅見かな あや
日かげれば風の起こりぬ浅き春 兵十郎
◎春浅し蕾の固き枝の先 京子
手をつなぐ身体の奥で遠雪崩 花帆
春浅し雲の流れにある懈怠 浩風
白魚のまなこ並べて揚げられし 太美子
幹三 選
隠し持つ小瓶の酒の梅見かな 浩一郎
梅が香にひとりのひと日しづもれる あや
◎春の雪媼一人の除けし径 兵十郎
日も雨も末黒芒の力とし 翠
◎退院の車でまはる梅見かな 暁子
鳥帰る半グラムほどの哀しみと みなみ
煙る雨末黒の芒に染み透る 乱
擤んで春といふともなほ浅し 浩一郎
春浅し漆拭きなる床光る 兵十郎
白魚の黒目愛らし潔し 邦夫
わが庭の黙つづきをり浅き春 太美子
◎スカートの裾吹く風や春浅し かな子
盆梅展眺むる頬に湖の風 洋一
ヒヤシンス舌に広がる嘘の味 みなみ
白魚の透明といふ色を汲む 暁子
山茱萸の花にひかれる我が齢 眞知子
妻と取る御八つやバレンタインの日 邦夫
◎ほどほどに好きな人との梅見かな みなみ
始まりはいつも混沌焼野原 輝子
春浅し樹々に来る鳥声はなく 茉衣
◎白魚のうち重なりて曇りけり みなみ
水の中水の色せし白魚汲む 暁子
遠山はまだ白き色梅見かな 眞知子
新人のごと春の電信柱 みなみ
ただ一枝病の床の梅見かな 安廣
山茱萸の花それぞれに黄を尽す 浩風
小雨あび山茱萸の黄のけぶる夕 嵐耕
鳥一羽走る末黒の芒はら 昴
◎日かげれば風の起こりぬ浅き春 兵十郎
ほろ苦くいとしき味の春菜かな 翠
金星の輝き妖し浅き春 言成
◎春浅し雲の流れにある懈怠 浩風
白魚のまなこ並べて揚げられし 太美子