待兼山俳句会
第593回 平成29年7月24日
選者吟
白玉や母ゐて小さき子でありし 浩一郎
夏の夜やおもてを通る笑ひ声
亭々の大樹添うたる夏館
白玉や本音わからぬ京ことば 幹三
真鍮のドアノブひやり夏館
夏の夜鴉鳴きをり何やある
選者選
浩一郎 選
◎カーテンの高く上がつて夏館 橙
アルルにて聞きし初蝉けふ京に 乱
遠雷やどこかに雨の匂ひして 言成
◎生温い風貼り付いて夏の夜 橙
ぬれた庭残し雷終焉す 眞知子
夏の夜や読むべき本を横に置き 洋一
◎真つ直ぐに湖の風来る夏館 京子
白玉やわが手小さきは母ゆづり 太美子
病む母と黙し遠雷聞きし夜 かな子
トマト熟れ園児ら一斉に昼寝 眞知子
◎千屈菜の卓に置かれて小さく揺れ
兵十郎
雷鳴を遠くに聞きて頁繰る 安廣
◎豪快に雷鳴ひとつ雨あがる 輝子
雷鳴に急ぎ蚊帳つる祖母なりき 眞知子
呼び鈴の遠くで鳴りぬ夏館 輝子
ひつそりと大樹の中の夏館 乱
窓全開青き風入れ夏館 暁子
木の匙で白玉突いて数へをり 橙
◎車椅子の母と見て居り遠花火 安廣
君の部屋在りし日のまま夏館 翠
夏の夜や木の香残れる丸太小屋 兵十郎
◎幸せは子と白玉をつくる午後 輝子
島なれば銀河も見ゆる夏の夜 言成
雷鳴のこんな夜誰か居てほしく 暁子
磯の香に浅き眠りの夜半の夏 昴
◎白玉や逝きたる人ら皆恋し 翠
居間に聞くワルツの調べ夜半の夏 嵐耕
夏の夜は漆黒ならず薄明り 茉衣
雷鳴やいとけなき子の天を指す 邦夫
幹三 選
◎カーテンの高く上がつて夏館 橙
向日葵に白昼の空ありにけり 太美子
蓮青葉うねらせ風の進みゆく 橙
遠雷や犬そそくさと小屋に入る 瑛三
遠雷を聞きつつ入りぬ仕舞風呂 瑛三
ぬれた庭残し雷終焉す 眞知子
遠雷や緊張吊尾根を走る 翠
夏の夜の風こそよけれ田んぼ道 邦夫
夕立に脱兎のごとく猫帰る 茉衣
コンクリの電柱ゆらり落雷す 翠
真つ直ぐに湖の風来る夏館 京子
◎白玉やわが手小さきは母ゆづり
太美子
警報に慌てて探す避雷小屋 元彦
千屈菜の卓に置かれて小さく揺れ
兵十郎
夏館天井高き句会場 瑛三
小さき雷小さき雨をこぼし過ぐ 暁子
◎夏の夜やおもてを通る笑ひ声 浩一郎
◎青竹を踏みて遠雷やり過ごす 浩風
◎心臓を抱きしめてゐる昼寝かな 陽子
白玉や母ゐて小さき子でありし 浩一郎
活けられし向日葵小さくところ得て
言成
鯉見つつ廊下を渡る夏の宿 昴
清流を跨ぐ白亜の夏館 昴
岩魚めし炊く飯盒の噴きこぼる 陽子
◎やうやくに子らの声消ゆ夏の夜
太美子
◎長々と猫はみ出せる夏館 翠
白玉や詮なきことが口に出(で)し 昴
雨やみてよりの地ほてり夏の夜 浩風
雨もりの跡も明治の夏館 瑛三
◎雷に好き嫌ひあり好きな方 眞知子
雷鳴やいとけなき子の天を指す 邦夫