待兼山俳句会
第587回 平成29年3月6日
兼題 鳥帰る・春塵(あや)
白酒・水温む(浩一郎)
土筆・苗木市(幹三)
席題 卓上に 菫・勿忘草
選者吟
鳥帰る深き祈りをもて仰ぐ あや
土筆摘んで父に供へるわが慣ひ
ふる里もそろそろ水のぬるむころ
ふるさとや山並を越え鳥帰る 浩一郎
白酒を酔ふほど男飲まされて
土筆摘む子供としての記憶かな
ふらここを漕ぐ両足は天を蹴る 幹三
丘といふ丘は陵鳥帰る
水温む自販機で売る鯉の餌
選者選
あや 選
君の居ぬ歳月卓の春埃 翠
春塵の窓拭きさつと助手席へ 邦夫
つくし野に芹もなづなも摘みてきし 輝子
◎ふるさとや山並を越え鳥帰る 浩一郎
ゆめいろいろ夫とまはるや植木市 かな子
丘といふ丘は陵鳥帰る 幹三
春埃積もる嫁ぎし娘のピアノ 暁子
◎買はずとも夢ふくらます植木市 翠
まなうらに忘れ得ぬ人忘れな草 瑛三
ふらここを漕ぐ両足は天を蹴る 幹三
汝かざす摘みし土筆は一、二本 昴
鳥雲に地酒醸しし煉瓦煙突 和江
冷かしが本気になりし植木市 洛艸
土筆つむただそのことがうれしくて 眞知子
土筆摘む袴取る手間考へず 言成
◎春の雨いつ降りしやら止みしやら かな子
つくしんぼ不登校児に空青き 和江
列車過ぐたびに震へる土筆かな 暁子
紫の勿忘草の映ゆる部屋 橙
◎故郷は異国で思へ鳥帰る 昴
水盤の鮒生きてゐる水温む 言成
ゆたんぽのまだ暖かき昼寝かな かな子
追伸に鶴の引きしと出水より 浩風
◎独り酌むものにはあらじ白酒は 翠
草花に緑の映えし植木市 元彦
踏まれてもやをら花上ぐ菫草 兵十郎
一と群の光となりて鳥帰る 瑛三
◎鶴発ちて出水の野には風ばかり かな子
ほのぼのと母想ひ出す土筆飯 京子
浩一郎 選
◎君の居ぬ歳月卓の春埃 翠
ホスピスの庭に土筆をつむ日かな 嵐耕
買はずとも夢ふくらます植木市 翠
植木市ひやかしもして月参り 瑛三
白酒の酔ほのかなる恋ありし 瑛三
◎土筆つむただそのことがうれしくて
眞知子
春の雨いつ降りしやら止みしやら かな子
春の海沖を白帆が二つ三つ 磨央
能登に住み北帰の雁を見送りし あや
土筆つみ数を競へる子ら笑顔 嵐耕
ほの香る小鉢に活けし蕗の薹 京子
◎独り酌むものにはあらじ白酒は 翠
水温む孫の生れし便り着く 昴
見るだけがやがて買ふ気に植木市 暁子
白酒を甘く見てゐし不覚かな 幹三
◎一と群の光となりて鳥帰る 瑛三
帰る鳥発ちたる後の池静か 安廣
春塵の机に好きと書いてみる かな子
白酒にもの憂くなりし厨事 暁子
お白酒媼となりし三姉妹 輝子
渡し舟ゆるり接岸水温む 洛艸
ほのぼのと母想ひ出す土筆飯 京子
水温む白壁つづく城下町 瑛三
◎土筆摘む昔のことを話しつつ 暁子
ふる里もそろそろ水のぬるむころ あや
機音の町家に流れ鳥雲に 洛艸
◎ふつと旅思ひ立つ日や水温む 京子
◎川底に動く影あり水温む かな子
手作りの白酒に酔ふ老夫婦 元彦
遥かなる明石大橋夕霞 京子
瀬の流れ光はじきて水温む 嵐耕
幹三 選
植木市しはがれ声が客を呼ぶ 浩風
◎売れ残るまづまづのもの苗木市 邦夫
毛氈をぱあつと拡げ雛飾 橙
植木市ひやかしもして月参り 瑛三
◎仁王像筋肉に置く春埃 暁子
◎土筆つむただそのことがうれしくて
眞知子
水温む家の建つらし槌の音 昴
鳥雲に入る自治会も代替り 翠
春の雨いつ降りしやら止みしやら かな子
つくしんぼ不登校児に空青き 和江
新聞にくるみし苗木渡さるる 乱
◎外濠のさざ波残し鳥帰る 京子
◎一と群の光となりて鳥帰る 瑛三
春塵の机に好きと書いてみる かな子
◎お白酒媼となりし三姉妹 輝子
ゆず一つ実をつけてをり植木市 昴
春光で切り分けてゆくケーキかな 花帆
◎左手はもう持ち切れぬ土筆摘む 橙
◎水温む洗濯物を高く上げ 橙
詰問をしながら触るるすみれかな 花帆
訛りある講釈を聞く植木市 暁子
故郷は異国で思へ鳥帰る 昴
交差点の長き信号春埃 洛艸
春雨に濡れてぞをかしこの家路 磨央
水温み人犬鳥が両岸に 茉衣
白酒を受くる手付の艶めきて 兵十郎
機音の町家に流れ鳥雲に 洛艸
ふつと旅思ひ立つ日や水温む 京子
畦道のゆるび心地や土筆摘む 浩風