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第645回 令和3年4月19日

「コロナまん延防止措置」の実施中であり、また、感染者が急増したため、2月の例会と同じ方式の通信句会と致しました(5句出句)。


出句者(計22名)

  瀬戸幹三・山戸暁子・浅野りょう

  碓井遊子・草壁 昴・西條かな子

  鈴木輝子・鈴木兵十郎・瀬戸橙

  鶴岡言成・寺岡 翠・中嶋朱美

  中村和江・西川盛雄・根来眞知子

  東中乱・東野太美子・平井瑛三

  宮尾正信・向井邦夫・森茉衣

  山田安廣

 

兼題 蘖・磯巾着(幹三)

   沈丁花・囀(暁子)

   当季雑詠  通じて5句


選者吟 
蘖に大きく開く森の空        幹三
問ひかけに応へまた問ひ囀れる
ゆれながら磯巾着の眠りかな   

向かひより寿司の届くや沈丁花    暁子

下からも囀を聞く山路かな
やはらかく生きてをりけり磯巾着

 

 
幹三選 
◎二の丸も三の丸にも花満つる    遊子
蘖のくひぜの空ろ包みゆく      邦夫
窓開けて囀の降る廚かな        翠
向かひより寿司の届くや沈丁花    暁子
沈丁や散歩道なる長き塀       邦夫
囀りの一塊りの枝渡          昴
囀を追ふ囀の乱高下         正信
◎囀や巡礼の道はるかなり      瑛三
名も知らぬただ囀に浸りゐて    太美子
乙女色の囀庭に零れくる       邦夫
餌を捕らへ磯巾着の高笑ひ       昴
膝折りし象の背に沿ふ春の風     正信
恐ろしき手は花のごと磯巾着     暁子
◎姿なくただ囀りの降る大樹    眞知子
囀の薬学部には美女多し       瑛三
◎新築の槌音軽し春の風       正信
鳥の来ぬ夜のリラこそ怪しけれ    邦夫
新しきクラスにも慣れ麦青む    かな子
囀りにしばし会話の途切れけり    遊子
囀に顔やはらかくなりにけり      橙
◎囀の止みて岬は風の音       正信

朝光に終の一花の白牡丹      太美子
◎蘖にはや大木の兆しあり       昴
やはらかく生きてをりけり磯巾着   暁子
木蓮のむらさき似合ふ礼拝堂     茉衣
飛魚に水先委ね隠岐の旅      りょう
指先に磯巾着を吸はせみる     兵十郎
口開けぬ磯巾着をまたつつく     輝子

 

幹三特選句講評
・春一番世に事無しと思ひけり     乱
 順調に巡って来る季節の気配に、ほっとする今年である。強風の中、嬉しさと安堵の気持ちが生れたのである。

・春一番声の吹き散る鬼ごつこ    正信
 強風をものともせず走り回っている子の動きが伝わってくる。元気な子ども達にも緊張の続く大人にも春が来る。

・少年は怒りかくさず冴返る     輝子
 感情を隠さない少年の青さが「冴返る」という緊張と呼応している。余寒という時間の延長もまた感じられる。

・うかうかと過ごせし日々よ下萌ゆる

                 かな子
 自粛という言葉に甘えて、実は自分を怠けさせていたのではないか?「恋や事業や」始めるべ き春が来ているというのに。

・猫柳見れば必ず触れてみる     暁子
 少々廻り道になろうが、道がぬかるんでいようが触れてみたくなるのが猫柳。作者は子どもの時からそうしてきたのであろう。

・猫柳とうとう触れてしまいけり    橙
 暖かさの中で心をくつろがせる猫柳。触ってみればいいじゃないかと思うが何か躊躇するわけがあるのか?思わせぶりなところに惹かれた。

暁子選 
人通り絶えて夜更の沈丁花      幹三
囀の零れて湖の千の綺羅       正信
移徙のせんなき別れ沈丁花     かな子
囀りに目覚めし朝の体操着      盛雄
二の丸も三の丸にも花満つる     遊子
窓開けて囀の降る廚かな        翠
はなやかにいよよ囀り奥の院     和江
夕闇を香りで染める沈丁花      茉衣
囀りの一塊りの枝渡          昴
◎蘖に小さき花咲く二、三輪     安廣
囀を追ふ囀の乱高下         正信
連翹の黄色の群が語る夢       茉衣
沈丁の香に振り返るもう一度     輝子
◎囀や巡礼の道はるかなり      瑛三
膝折りし象の背に沿ふ春の風     正信
◎姿なくただ囀りの降る大樹    眞知子
◎沈丁の送り迎への二三旬       乱
囀りは雀の学校みな生徒       朱美
ひこばえの瘤に捩れに育ちたり    遊子
朝仕事終え囀のエスプレッソ      翠
避難所に香り分けおり沈丁花     盛雄
桜桜日本に生れし幸せを       朱美
囀りにしばし会話の途切れけり    遊子
◎囀の止みて岬は風の音       正信
朝光に終の一花の白牡丹      太美子
◎飛魚に水先委ね隠岐の旅     りょう
湧水に蝌蚪群れ上がり下がりけり   盛雄


暁子特選句講評
・冴返る老友欠けし読書会       翠
 この句会でも相次いでお二人が欠けた。その空白は埋めるべくもない。

・晴天の鈍きクレーン冴返る     邦夫
 大きな工事現場か、湾岸か、抜けるような青空を背景にきりんのようなクレーンがゆっくりと首を上げ下げしている。空気はまだ寒さにぴんと張りつめているが、どこか春が近い感じだ。

・下萌やもう制服の届く頃      輝子
 幼稚園から高校まで、入園入学を待つ喜びを作者は制服に託して詠まれた。

・せせらぎのララバイ眠る猫柳   太美子
 「せせらぎのララバイ」で切れる。せせらぎの歌う子守唄に、川辺の猫柳は心地よく眠っている。

・北窓を開けて光のフェルメール   盛雄
 冬中閉め切って北風を防いでいた窓。その窓を開けた途端に差し込んで来た春の日差しに、作者は窓の明かりを描いたフェルメールの絵を思われた。

互選三句

朱美選        
木洩れ日の並木道行く春の空     茉衣
姿なくただ囀りの降る大樹     眞知子
飛魚に水先委ね隠岐の旅      りょう
瑛三選        
囀の止みて岬は風の音        正信
口開けぬ磯巾着をまたつつく     輝子
夕闇を香りで染める沈丁花      茉衣


和江選        
磯巾着は海のアネモネ花咲かせ     乱
香りつつ沈丁零る月の宵       安廣
囀を追ふ囀の乱高下         正信

 

かな子選        
囀の零れて湖の千の綺羅       正信
蘖のくひぜの空ろ包みゆく      邦夫
寅さんも磯巾着も風まかせ     りょう


邦夫選        
人通り絶えて夜更の沈丁花      幹三
やはらかく生きてをりけり磯巾着   暁子
囀や二羽のもつれて高く高く     輝子

 

言成選        
木洩れ日の並木道行く春の空     茉衣
美しく妖しき磯巾着の罠      太美子

夕闇を香りで染める沈丁花      茉衣

橙選        
新しきクラスにも慣れ麦青む    かな子
蘖に大きく開く森の空        幹三
膝折りし象の背に沿ふ春の風     正信


太美子選        
囀の零れて湖の千の綺羅       正信
蘖にコロボックルの陰あらむ      橙
朝仕事終え囀のエスプレッソ      翠


輝子選        
下からも囀を聞く山路かな      暁子
蘖に大きく開く森の空        幹三
蘖にコロボックルの陰あらむ      橙

兵十郎選        
問ひかけに応へまた問ひ囀れる    幹三
汐満ちて呪縛解かれし磯巾着     輝子
蘖に大きく開く森の空        幹三


昴選        
蘖にコロボックルの陰あらむ      橙
丁子の香門開くことのなき屋敷   眞知子
汐満ちて呪縛解かれし磯巾着     輝子


茉衣選        
切株の太さの外に蘖ゆる       幹三
姿なくただ囀りの降る大樹     眞知子
人通り絶えて夜更の沈丁花      幹三

正信選        
囀りの一塊りの枝渡          昴
囀りは雀の学校みな生徒       朱美
口開けぬ磯巾着をまたつつく     輝子


眞知子選        
囀の零れて湖の千の綺羅       正信
夕闇を香りで染める沈丁花      茉衣
ゆれながら磯巾着の眠りかな     幹三


翠選        
下からも囀を聞く山路かな      暁子
避難所に香り分けおり沈丁花     盛雄
向かひより寿司の届くや沈丁花    暁子

盛雄選        
ゆれながら磯巾着の眠りかな     幹三
飛魚に水先委ね隠岐の旅      りょう
囀や一樹楽器となりてをり      暁子


安廣選        
囀の零れて湖の千の綺羅       正信
やはらかく生きてをりけり磯巾着   暁子
丁子咲き出て行きし子の便りなく  眞知子


遊子選        
沈丁花工事の音に負けぬ香を    兵十郎
蘖にはや大木の兆しあり        昴
はなやかにいよよ囀り奥の院     和江

乱選        
囀を追ふ囀の乱高下         正信
ひこばえの瘤に捩れに育ちたり    遊子
丁子の香門開くことのなき屋敷   眞知子


りょう選        
木洩れ日の並木道行く春の空     茉衣
ひこばえや明日といふ日を信じたし かな子
丁子咲き出て行きし子の便りなく  眞知子


参加者自選句
桜桜日本に生れし幸せを       朱美
沈丁花重き香澱む雨意の園      瑛三
詰襟に才知秘むやも孼し       和江
ひこばえや明日といふ日を信じたし かな子
乙女色の囀庭に零れくる       邦夫
この窓は磯巾着の花盛り       言成
蘖にコロボックルの陰あらむ      橙
大人にはなれぬ運命に蘖ゆる    太美子
汐満ちて呪縛解かれし磯巾着     輝子
囀は藪の中より影動く       兵十郎
亡き妹の愛でし狭庭沈丁花       昴
木蓮のむらさき似合ふ礼拝堂     茉衣
囀を追ふ囀の乱高下         正信
丁子咲き出て行きし子の便りなく  眞知子
蘖は明日への希望自粛老        翠
囀りに目覚めし朝の体操着      盛雄
香りつつ沈丁零る月の宵       安廣
二の丸も三の丸にも花満つる     遊子
磯巾着は海のアネモネ花咲かせ     乱
寅さんも磯巾着も風まかせ     りょう

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