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第663回 令和4年8月8日      
      
例会は、コロナ感染者が急増したため、またしても5か月ぶりに会員の投句から成る「清記」を材料とした通信句会とせざるを得ませんでした(全員5句出句)。


出句者

 瀬戸幹三・山戸暁子・植田真理・碓井遊子  覚野重雄・西條かな子・鈴木輝子

 鈴木兵十郎・瀬戸橙・寺岡翠・中村和江

 西川盛雄・根来眞知子・東中乱

 東野太美子・平井瑛三・宮尾正信

 向井邦夫・森茉衣(計19名)


兼題

 西瓜・天の川(幹三)

 盆の月・赤のまんま(暁子)

 当季雑詠  通じて5句
     
選者吟
天の川縄文杉にかかりけり      幹三
終盤は顔突つ込んでゆく西瓜    
恐竜の最後の夜の銀河かな 
乾きたる六腑潤す西瓜かな      暁子
わが遺影選びてありぬ盆の月
天の川村の二三戸灯の洩るる

 
幹三選 
四万十の空の高さや天の川     兵十郎
ふるさとに寄る辺無くして盆の月  かな子
息こらし父と見入りし天の川      乱
懐かしい町の小路の盆の月       橙
◎銀漢のありて夜空の厚みかな     橙
長き夢醒めて眺める盆の月     かな子
銀河濃し父の遺品の遠眼鏡      正信
◎召し上がれ一人遊びの赤まんま    乱
◎モンゴルの一夜銀河の端に寝る   輝子
盆の月そろり上り来新地かな     瑛三
八月を融けゆくごとく歩きけり    真理
井戸水に浸かる西瓜に手を置きぬ    橙
固唾呑み見つむる手許西瓜割る    輝子
天の川村の二三戸灯の洩るる     暁子
盆の月仰ぎ故郷を離れたり      邦夫
◎井戸にある西瓜遠くに光りをり    橙
盆の月やさしや軽き風をよぶ     重雄
西瓜切る主見守る大家族       邦夫
艫を押し舳先を引くや天の川     重雄
長き坂息せき登り盆の月       真理
縁側に影連なりて西瓜食ぶ       橙
   
幹三特選句講評
・銀漢のありて夜空の厚みかな     橙
 天の川は銀河系の星の大集団。夜空は平面ではなく果てしない奥行があることを知るのである。夏から秋へ、宇宙の不思議さを考える季節。

・召し上がれ一人遊びの赤まんま    乱
 一人っ子は一人っ子なりに上手に遊ぶ。一人ままごとをしている子、それをのぞいている母親、赤まんまのうら寂しさが句を引き締めている。

・モンゴルの一夜銀河の端に寝る   輝子
 地平線から地平線へ、空を横切る天の川の下で野宿をするとこんな気分になるに違いない。たいへん羨ましい。
   
・井戸にある西瓜遠くに光りをり    橙
 我が生家も西瓜を紐で縛って井戸へ放り込んで冷していた。覗くと水面は遠く、そこに浮かぶ西瓜の輪郭が見えた。井戸の深さ。涼しさがよくわかる句。


暁子選
高原の静寂流るる天の川       瑛三
八月や飛花落葉の八十回       茉衣
◎四万十の空の高さや天の川    兵十郎
命日や独り仰ぎて天の川        翠
低気圧来るらし赤き盆の月     兵十郎
槍ヶ岳の槍突く先の天の川      幹三
恰好は若き剣士の西瓜割り      瑛三
◎胡蝶蘭静かに蟲を誘ひけり     遊子
星どちにも生死ありてふ天の川    瑛三
奥能登の棚田ゆく道天の河      盛雄
◎浅黒き的屋の肩に赤とんぼ     真理
銀河濃し父の遺品の遠眼鏡      正信
台北の夜市に紛れ盆の月       和江
盆の月寝つけぬ吾子と愛でし夜も   輝子
◎モンゴルの一夜銀河の端に寝る   輝子
吾一人此岸に在りて盆の月       乱
店主めきデン助西瓜黒光り      和江
◎八月を融けゆくごとく歩きけり   真理
刃の尖り受けて弾ける西瓜玉     重雄
旧居消え西瓜浸しし井戸も涸れ     乱
凭れあふ石の塔婆に盆の月      和江
山羊の名はゆきといふらし赤のまま  幹三
アリゾナや金砂銀砂の天の川     重雄
アメダスに逢瀬を問ふや天の川    和江
天の川縄文杉にかかりけり      幹三
御巣鷹の御霊にそよぐ赤のまま    和江

暁子特選句講評

・四万十の空の高さや天の川    兵十郎
 都会にはない澄んだ夏の夜空。

・胡蝶蘭静かに蟲を誘ひけり     遊子
 静かに誘うという表現がこの高級感ある花にふさわしい。

・浅黒き的屋の肩に赤とんぼ     真理
 夜店や祭りで的屋の活躍するシーズン、それも赤とんぼの多い夕暮れからが忙しい。

・モンゴルの一夜銀河の端に寝る   輝子
 壮大な景色、旅の一夜の体験。

・八月を融けゆくごとく歩きけり   真理
 炎天下を歩かざるを得ない時、人は己の無力さを自覚する。

*今月の兼題は類想句になりやすく、一歩抜き出るのが難しかったようで、特選句は当季雑詠の句が多くなってしまった。しかし兼題に挑戦することは、自分の新しい世界を開くことにもなるので、楽しんで下さい。

互選三句
朱美選        
命日や独り仰ぎて天の川        翠
西瓜切る主見守る大家族       邦夫
モンゴルの一夜銀河の端に寝る    輝子
 モンゴルの夜、昼かと思うほどの星の明るさ思い出した。


瑛三選        
あっという間に西瓜消えたる大家族   翠
御巣鷹の御霊にそよぐ赤のまま    和江
盆の月ひそかに偲ぶ人のあり     暁子
 同感。年と共にふえて来る。年と共になつかしい。


和江選        
体幹も意のままならず赤のまま     翠
銀河発宇宙周遊切符買う      眞知子
銀漢のありて夜空の厚みかな      橙
 宇宙の広がりを厚みとした表現に感心しました。

かな子選        
召し上がれ一人遊びの赤まんま     乱
上品な人上品に西瓜食ぶ       暁子
気丈なりし母のさびしさ盆の月   太美子

 失って初めて知った母のさびしさ。深く哀しい追憶。

邦夫選        
ふるさとに寄る辺無くして盆の月  かな子
終盤は顔突つ込んでゆく西瓜     幹三
八月を融けゆくごとく歩きけり    真理
 残暑を戸外で過ごす人のやりきれなさを見事に表現。

重雄選        
夕凪の連れ来ぬ赤き盆の月     兵十郎
吾一人此岸に在りて盆の月       乱
上品な人上品に西瓜食ぶ       暁子
 どんな食べ方だったんでしょうね。


橙選        
星どちにも生死ありてふ天の川    瑛三
山羊の名はゆきといふらし赤のまま  幹三
八月を融けゆくごとく歩きけり    真理
 暑いのになぜか歩かなければならない事がある八月。

太美子選        
モンゴルの一夜銀河の端に寝る    輝子
八月を融けゆくごとく歩きけり    真理
あっという間に西瓜消えたる大家族   翠
 西瓜の匂い、子供達のはしゃぐ声、懐かしい夏の風景。


輝子選        
八月を融けゆくごとく歩きけり    真理
縁側に影連なりて西瓜食ぶ       橙
終盤は顔突つ込んでゆく西瓜     幹三
 半円形の西瓜。食べ終わる頃はまさにこんな事態に。


兵十郎選        
放課後は寄道時間赤まんま     眞知子
終盤は顔突つ込んでゆく西瓜     幹三
モンゴルの一夜銀河の端に寝る    輝子
 モンゴル草原に寝転ぶとは雄大。銀河の端がよい。


茉衣選        
高原の静寂流るる天の川       瑛三
古寺や破れ築地に赤のまま      瑛三
吾一人此岸に在りて盆の月       乱
 同感しつつ、孤独を感じないのは彼岸が賑やかだから?


正信選        
わが遺影選びてありぬ盆の月     暁子
モンゴルの一夜銀河の端に寝る    輝子
銀漢のありて夜空の厚みかな      橙
 銀漢に空の長さや幅では無く厚みを感じる感性が素敵。


眞知子選        
大花火放つ夜空の盆の月       盛雄
山羊の名はゆきといふらし赤のまま  幹三
モンゴルの一夜銀河の端に寝る    輝子
 こんな体験をした人が心底羨ましいです。


真理選        
台北の夜市に紛れ盆の月       和江
モンゴルの一夜銀河の端に寝る    輝子
艫を押し舳先を引くや天の川     重雄
 悠然とした光景にゆったりとした気持ちになります。

 
翠選        
銀河濃し父の遺品の遠眼鏡      正信
モンゴルの一夜銀河の端に寝る    輝子
銀漢の底に動かぬ観覧車       正信
 夜の遊園地。眠る観覧車に覆い被さる様に大銀河が。

盛雄選        
叱られ児なみだまじりの西瓜食べ   真理
あっという間に西瓜消えたる大家族   翠
四万十の空の高さや天の川     兵十郎
 四万十川の夜空を数字四万十と掛けて詠む天の川の流れ。


遊子選         
台北の夜市に紛れ盆の月       和江
モンゴルの一夜銀河の端に寝る    輝子
西瓜割る父青年で在りし日の     盛雄
 物不足のあの時期西瓜は輝いていた。父もまだ若々しく。


乱選        
ふるさとに寄る辺無くして盆の月  かな子
古寺や破れ築地に赤のまま      瑛三
モンゴルの一夜銀河の端に寝る    輝子
 寝所はモンゴルの銀河の堤。自然も発想も大きい。


参加者自選句
古寺や破れ築地に赤のまま      瑛三
御巣鷹の御霊にそよぐ赤のまま    和江
ギプスせる妹の写真に赤まんま   かな子
指音で熟れ具合知る大西瓜      邦夫
刃の尖り受けて弾ける西瓜玉     重雄
銀漢のありて夜空の厚みかな      橙
気丈なりし母のさびしさ盆の月   太美子
モンゴルの一夜銀河の端に寝る    輝子
低気圧来るらし赤き盆の月     兵十郎
八月や飛花落葉の八十回       茉衣
銀漢の底に動かぬ観覧車       正信
家族減り西瓜自づと小さくなり   眞知子
叱られ児なみだまじりの西瓜食べ   真理
命日や独り仰ぎて天の川        翠
西瓜割る父青年で在りし日の     盛雄
美ら島の民の祈りや沖縄忌      遊子
吾一人此岸に在りて盆の月       乱

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