待兼山俳句会
第599回 平成29年12月18日
選者吟
くつさめの止まるを待ちてご挨拶 浩一郎
梟の鳴く夜ひとつのことの果て
冬のる星はるけく来しを思ひけり
くろがねの鍋煮立ちて薬喰 幹三
空広きところに出でて嚔する
梟の鳴くたび揺るる山の闇
選者選
浩一郎 選
明日の旅巡礼宿の薬喰 翠
梟の住むてふ寺の深き闇 兵十郎
◎梟の鳴く夜は子捕りしのび寄る 暁子
独り居の思ひのままにせき嚏 陽子
長き旅梟をきく夜の帰心 瑛三
◎君も吾も老いたり仰ぐ冬の星 輝子
嚏して森の静寂のなほ深く 兵十郎
トナカイステーキ北の旅路の薬喰 瑛三
◎空広きところに出でて嚏する 幹三
風花や母の生きたる一世紀 輝子
襖越し子の嚏聞く夜のしじま 安廣
◎鍋囲み老すこやかに薬喰 嵐耕
大嚏あとは普段の顔となり 嵐耕
◎手のひらに入れ歯残れり大嚏 邦夫
◎上品に押し殺されしくさめかな 乱
妹山の背山にもたれ眠りけり 洋一
老犬も主も嚏の散歩かな 和江
大嚏さて寝(いぬ)るかとひとり言 かな子
藪柑子みつけもしたり御堂筋 輝子
◎くさめして誰かが誹る気配かな 洛艸
熱燗や慣ひとなりし独り酒 洋一
わが君は小兵なれども大嚏 翠
顔見世が南座を飾る京の町 磨央
嚏のひとつの誰かすぐわかり 輝子
侘助は母の好みし茶花なり 乱
◎梟のほうと鳴く森月高し 安廣
オリオンの沈めば冬の夜明けかな 言成
厚き雲抱へて眠る六甲山 洋一
◎梟のほつほうと啼く坊泊り 瑛三
時雨きて犬小屋の主もう居ない 暁子
どこからかきつと鼬の見てゐる夜 幹三
冬日和猫のポーズで背をのばす 輝子
◎静寂の杜の木洩れ日神の旅 京子
噛み合はぬ心そぼ降る時雨かな 安廣
天井裏鼬尻尾で遊びをり 和江
緩やかな独りの暮らし石蕗の花 京子
◎オリーブの青き実ふたつ吾子ふたり
かな子
句座の卓花柊の香のほのと 言成
幹三 選
梟の鳴く夜は子捕りしのび寄る 暁子
◎目鼻口一つに集め嚏かな 暁子
音も灯も消えたる後の冬の星 暁子
梟のみ倒木の生ひ立ちを知る 和江
君も吾も老いたり仰ぐ冬の星 輝子
◎山頂の嚏に逃ぐるものの音 兵十郎
クリスマス色の花束注文す 橙
冬の星はるけく来しを思ひけり 浩一郎
梟は目を閉ぢ夜の底白し 昴
梟の声を遠くに眠りゆく 浩一郎
◎嚏して森の静寂のなほ深く 兵十郎
わびすけや老舗の当主代替り 眞知子
縁ありや凍星一つ吾を見つむ 乱
◎ぽつかりと雲の切れ間や冬の星 兵十郎
◎独り居の気晴らしとなる大嚏 京子
梟に幼子応ふほーほーと 乱
梟や近づき難き夢の城 昴
手のひらに入れ歯残れり大嚏 邦夫
◎上品に押し殺されしくさめかな 乱
梟をまつすぐ見つめ見つめらる 橙
◎薬喰と言うて集へる一味かな 浩一郎
梟の鳴く夜ひとつのことの果て 浩一郎
◎あの声であの梟と思ひをり 眞知子
荒星やすやすや眠る赤ん坊 邦夫
嚏ひとつ聞こえて誰かすぐわかり 輝子
◎震へつつ冬の星見る人集ふ 元彦
◎山小屋の薬喰には武勇伝 和江
転勤地何処も故郷冬の星 京子