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第621回  平成31年6月17日

兼題 糸蜻蛉・万緑(幹三)

十薬・網戸(暁子)

 

選者吟

はらはらと記憶は薄れ糸とんぼ    幹三

どくだみに日当る刻のありにけり

はきはきと答へて薔薇を剪りにけり

別の世とこの世を往き来糸とんぼ   暁子

新しき風朝夕に古網戸

網戸してほどよき距離の隣りかな

 

選者選

幹三選

地震の地にまた万緑の巡り来し    盛雄

文字摺草神のたいくつしのぎとも  眞知子

万緑に埋もれ珈琲旨き店      かな子

背の順に稚児進みたりお田植祭    遊子

紫陽花をくぐりて落つる雨の音    洋一

萬緑の中に引き寄せられる道      橙

◎先生に泣きぼくろありソーダ水    橙

どくだみの残り香持ちて厨事    太美子

一等三角点囲む萬緑鎮もりて    兵十郎

◎青嵐猫は野生に戻りけり       翠

◎糸とんぼ内緒のやうに枝先に   眞知子

◎十薬とわかる香つけて子の帰る   輝子

◎十薬の句座に置かれしまま香る  兵十郎

純白の四葩よ若き日の恋よ      安廣

ゆらゆらと庭に住みつく糸蜻蛉    朱美

万緑や白く静まるシナゴーグ     和江

萬緑に問訊の僧吸ひ込まれ      洋一

◎万緑に溺れ過ぎたる一日かな    邦夫

十薬や父の桐下駄そのままに     和江

◎捩花の蕾早々ねぢれをり      言成

◎軒に吊る十薬の香や闇深し     安廣

十薬の香りたくまし花十字      盛雄

忘れたきことありひたに網戸洗ふ  かな子

十薬と弓を愛せし祖父のこと     遊子

道問饒舌な逮夜の僧と新茶汲む    輝子

道問へば萬緑の中行けと言ふ     輝子

 

暁子選 

◎赤のみにあらずトマトの多士済済  輝子

網戸して山の精気の中に座す     正信

地の命萬緑となり今燃ゆる     眞知子

また一人どくだみの咲く道に入る   幹三

◎背の順に稚児進みたりお田植祭   遊子

網戸なき風こそ好きと肥後育ち    和江

網戸越し団欒の声筒抜けに      洛艸

◎それぞれにそれぞれの父の日ありて  橙

青嵐猫は野生に戻りけり        翠

万緑の中やセスナ機傾ぎ着く     正信

万緑や園児頬張る塩むすび      正信

吊橋に迫る万緑ほしいまま      洛艸

万緑に溺れ過ぎたる一日かな     邦夫

◎十薬や父の桐下駄そのままに    和江

尾瀬遥かテラスの黄すげ吹かれけり りょう

滝水の千手となりて砕け散る     遊子

◎捩花の蕾早々ねぢれをり      言成

団欒の灯りと声の漏る網戸      言成

◎どくだみに日当る刻のありにけり  幹三

喜怒哀楽隣家近づく網戸かな      翠

絲蜻蛉魂を捜すかふうはりと    兵十郎

萬緑へ弓胼胝の手で引き絞る     輝子

軒に吊る十薬の香や闇深し      安廣

新調の網戸に青き風通る        翠

万緑隙間に亰の町光る         乱

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