待兼山俳句会
第596回 平成29年10月
台風のため後選のみ
選者吟
籠りゐる暮しの窓を鳥渡る 浩一郎
門守るごとく置かれて菊の鉢
気がかりのひとつ秋雨じつと見る
大欅樹幹の疵に秋の雨 幹三
じりじりと吾に背を向けてゆく螇蜥
秋霖や灯台の名は岬の名
選者選
浩一郎 選
菊を置く富士見る丘に供華として 兵十郎
◎ビルの灯のはやばやともり秋の雨 嵐耕
雨垂れのぽつりぽつりと秋深む 瑛三
君逝きて秋雨はしめやかに降る 昴
黒髪の柩菊もて溢れしむ 暁子
◎君在らば金婚の日ぞ秋黴雨 翠
特選の大菊その香も大輪に 嵐耕
濃紺の空月光に濡れ鳥渡る 安廣
富山より薬売来る文化の日 陽子
◎今年早汝が三回忌秋の雨 昴
嵯峨菊の揺れつつ光纏ひをり 眞知子
秋霖や灯台の名は岬の名 幹三
◎秋雨や嵯峨の藪道独り行く 洛艸
留学の子を送る朝菊香る 安廣
能登の沖荒るる大海鳥渡る 瑛三
秋霖の止みて一枚はおる朝 嵐耕
投票日風伴ひし秋の雨 言成
風もなく平和な一と日鳥渡る 嵐耕
秋天やすべてを憂しと思ふ老い かな子
お元気のご様子菊の鉢並ぶ 兵十郎
シテの舞ふ白衣の袖や塔の月 安廣
雨止みて色鮮やかに柿紅葉 兵十郎
寄宿舎の窓を過りて鳥渡る 洛艸
◎病室に菊の香おきて父逝きぬ 安廣
お仏壇開けばほのと菊薫る 言成
◎秋の雨部屋は散らかるばかりなり 橙
秋雨や宛名滲みて受くる文 洋一
幹三 選
◎籠りゐる暮しの窓を鳥渡る 浩一郎
ビルの灯のはやばやともり秋の雨 嵐耕
ピカソダリゴッホと籠る秋の雨 翠
◎雨垂れのぽつりぽつりと秋深む 瑛三
◎秋の雨重き箸持つ独り膳 洋一
鳥渡る人の開きし平野見て 邦夫
ばつたみな風上へ跳ぶ草千里 言成
大木の枝ざわわざわ鳥渡る 橙
屠所へひかれゆく牛の眼や秋の かな子
◎門守るごとく置かれて菊の鉢 浩一郎
留学の子を送る朝菊香る 安廣
秋霖の止みて一枚はおる朝 嵐耕
秋天やすべてを憂しと思ふ老い かな子
声そろへ湖面に低く鳥渡る 翠
お元気のご様子菊の鉢並ぶ 兵十郎
◎寮ありしあたりばつたのしきり飛ぶ
浩一郎
先ずはこの山脈(やまなみ)越えよ渡り鳥 昴
栗ご飯炊けば師の句を親しうす 太美子
頁繰る秋蝶の羽開くごと 陽子
病室に聞くのか起きて父逝きぬ
散歩する日向を選ぶ菊日和 嵐耕
◎秋の雨部屋は散らかるばかりなり 橙
秋雨や宛名滲みて受くる文 洋一
席ゆづりくれる人あり秋夕焼け かな子
しばらくは動く玩具になるばつた 輝子