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第674回 令和5年5月15日

 

会場  大阪俱楽部会議室

出席者 瀬戸幹三・山戸暁子・小出堯子

    鈴木輝子・鈴木兵十郎・寺岡翠

    東中乱・東野太美子・向井邦夫

    山田安廣


投句者 植田真理・碓井遊子・草壁昴

    西條かな子・鶴岡言成・中嶋朱美

    中村和江・西川盛雄・根来眞知子

    平井瑛三・森茉衣

  出席者10名+投句者11名 計21名


兼題  夏めく・鱚(幹三)

    薔薇・子供の日(暁子)

    当季雑詠 通じて8句

 

選者吟
マヨネーズたつぷり使ふこどもの日   幹三    
夏めくや卓布を白に変へませう           
近づけばすこしゆらめく金魚草
木に登る父を見上ぐる子どもの日    暁子
歌ひ終へ大きな薔薇を抱きけり
雲の影今薔薇園を昏めをり
 
幹三選 
並び立つ鱚釣る竿や大落暉      兵十郎
こどもの日折り紙兜は大きめに     盛雄
はなやぎに気怠さ及ぶ薔薇の午後   太美子
汗疹して泣く赤子抱き夜明かな     真理
釣り人の竿振る音も夏めきて      安廣
セーラー服覗く手足の夏めきて      乱
◎歌ひ終へ大きな薔薇を抱きけり    暁子
土を入れ話しかけるや薔薇咲けり     翠
◎観覧車の高みに上りぬ子供の日     昴
藁焼きの火勢あがるや初鰹       遊子
闘牛士入場するや夏来る        遊子
絹の肌光らせて鱚釣られける      安廣
咲くものも二巡三巡夏めきて       乱
◎手びさしで待つ交差点夏きざす    輝子
背を返し光残して鱚速し        瑛三
こどもの日大人ばかりのバーベキュー  輝子
◎お茶室の下地窓なる若葉かな     遊子
◎木に登る父を見上ぐる子どもの日   暁子
到来のワインのありて鱚を焼く    かな子
都府楼の礎石夏めく日射しかな     盛雄
紅薔薇の紅極まりて黒を帯び      暁子
雲の影今薔薇園を昏めをり       暁子
薔薇の風抜け来しアーチ潜りけり   太美子
◎雨とても明るき庭や夏きざす     瑛三
小さき背にリュックの躍る子どもの日  安廣
子供の日堀渡り行くヌートリア    兵十郎
◎たっぷりと雨宿す薔薇剪りにけり  太美子
土曜午後人待ち顔の薔薇真紅       翠

   

幹三特選句講評
・歌ひ終へ大きな薔薇を抱きけり    暁子
 明るく照らされたステージ、いつまでもつづく拍手喝采。薔薇の華やかさが伝わってくる一句。

・観覧車の高みに上りぬ子供の日     昴
 このワクワク感は、子どもの頃の気持ちに通じる。明るく楽しい一日がうかがえる。中八は調べが悪いので「高く上りぬ」「高みに上り」などお考えいただきたい。


・手びさしで待つ交差点夏きざす    輝子
 いつも通る道で感じた夏が、すらすらと句になった。その軽さが魅力。思わずかざした手、日差しはますます強くなる。
   
・お茶室の下地窓なる若葉かな     遊子
 障子を通して感じる若葉である。そこに窓の形、格子の影もあいまって茶室にふさわしい淡い初夏の光が描かれた。

・木に登る父を見上ぐる子どもの日   暁子
 子ではなく父が「こどものように」木登りをしている「逆転」がおもしろい。このままだと見上げている主語が曖昧に思える。「父」とあるので子供の存在は見えているので「父見上げをり」とはっきり切ったらどうか、と。

・雨とても明るき庭や夏きざす     瑛三
 茂りはじめた庭にはらはらと降る雨を、縁側から見ている風情、まことに俳味がある。初夏の雨とはこういうものである。


・たっぷりと雨宿す薔薇剪りにけり  太美子
 茎に触れるとはらはらと水の粒がこぼれた。朝まで残った雨である。ひんやりとした薔薇の花が今作者の手の中にある。個人的には黒に近い紅薔薇を思った。


暁子選
子等それぞれ戻りゆきたり子供の日   瑛三
◎並び立つ鱚釣る竿や大落暉     兵十郎
◎はなやぎに気怠さ及ぶ薔薇の午後  太美子
夏きざすさらさらの髪あそばせて    輝子
夏めくや川辺に川の音聞きに      幹三
ピースてふ重き名を持つ薔薇揺るる  眞知子
◎母の日や何も要らねど待つ何か    輝子
湖も空も真っ青に夏来る        遊子
鱚を釣る五匹に四匹ベラであり     言成
こどもの日大人ばかりのバーベキュー  輝子
お茶室の下地窓なる若葉かな      遊子
到来のワインのありて鱚を焼く    かな子
◎鱚釣や風は淡路へ濃き潮目      和江
都府楼の礎石夏めく日射しかな     盛雄
雨音や鱚天の汐香る湯気        真理
砂の色砂の柄せしきすごかな      幹三
◎雨とても明るき庭や夏きざす     瑛三
心臓の移植を待ちて子どもの日     真理

     
暁子特選句講評

・並び立つ鱚釣る竿や大落暉     兵十郎
 海へ突き出した突堤のような釣り場を想像した。折からの眩しい夕日の中、釣果を競う。

・はなやぎに気怠さ及ぶ薔薇の午後  太美子
 これは花の心情だろうか、観る人のそれだろうか。私は人の側と理解して、華やかな気分がやがてけだるさに移ってゆく午後を表現されたと思った。「及ぶ」は「達する、ついにそんな気持ちになる」という意味か。


・母の日や何も要らねど待つ何か    輝子
 母の日の母の心情は誠にその通りです。

・鱚釣や風は淡路へ濃き潮目      和江
 明石あたりだろうか。初夏の穏やかな日の瀬戸内海の釣り風景が目に浮かぶ。

・雨とても明るき庭や夏きざす     瑛三
 五月には「卯の花腐し」という季題があるが、今年の五月は雨の日が多い。しかしその雨は緑を一層あざやかにしてくれる、どこか明るい雨である。


参加者自選句
庭の薔薇揃って開花雨上がり      朱美
雨とても明るき庭や夏きざす      瑛三
琥珀めく木斛の照り夏めきぬ      和江
籠球に涌きたつ子らや夏めきて    かな子
夏めきぬ山の黄緑むくむくと      邦夫
鱚を釣る五匹に四匹ベラであり     言成
生きづらき子の多き世や子どもの日   堯子
日に眩しロロブリジーナてふ黄薔薇  太美子
夏きざすさらさらの髪あそばせて    輝子
赤き薔薇十本贈る十年目       兵十郎
花びらのまるくやさしきバラ咲きぬ    昴
ばら園の香りに浮世の憂さ忘れ     茉衣
白壁の濃き我が影や夏に入る     眞知子
夏めきて艶光りたる献体碑       真理
山路独り励ます幼な子供の日       翠
ふいに薔薇足止められし赤さかな    盛雄
手の中で震へる鱚の命かな       安廣
闘牛士入場するや夏来る        遊子
子ら帰り鯉もしよんぼり子供の日     乱

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